ここから本文です
【お知らせ】映画館の上映スケジュールについて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、実際の上映時間と異なる可能性があります。ご不明な場合は、各劇場にお問い合わせくださいませ。

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー (2017)

REBEL IN THE RYE

監督
ダニー・ストロング
  • みたいムービー 162
  • みたログ 276

3.63 / 評価:205件

僕はウソのない物語を書きたいだけなんだ

  • yab***** さん
  • 2019年8月19日 21時30分
  • 閲覧数 466
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

『ライ麦畑で捕まえて』。学生の頃読んで、インチキ大人が跋扈する社会に出たくないと思った。子供の世界(ライ麦畑)から大人の世界へ飛び降りようとする子供たち。そんな彼らを崖っぷちで阻止するキャッチャー。その主人公ホールディングの姿に共感を覚えた。
 無気力、無感動、無関心と言われた、僕ら三無世代にとって、サリンジャーは心の拠り所だった。
 
 出版当時、『ライ麦畑で捕まえて』は、編集者から書き直しを命じられた。
 サリンジャーは、作者としての”声”を否定された。
「”声”が物語を圧倒してしまって、作品が単にエゴの表現になる。要するに君の”声”は物語を乗っ取っていない。君の”声”はいい。だが説明し過ぎだ。読者の理解力を信じろ。気の利いたものを狙い過ぎている」
 男女の物語は、恋に落ちキスし心温まる終わりを迎える。それが当時のアメリカ文学の現状。編集者は、無駄な感情の発露を、可能な限りそぎ落とすのが仕事。

 それに対するサリンジャーの主張が心を打つ。
「僕はウソのない物語を書きたいだけなんだ。生きることの苦しみを偽りなく伝えたい。(若者の物語を書くのは)無垢だから。まだ世界に汚されていない。いろんなものを目にしてきたせいで僕はそれを失ったけど」
 第二次世界大戦に参戦した彼。戦争のフラッシュバックで、彼はインチキ大人が初めた戦争に対する反戦思想を、若者の無垢な心で訴えたかったのかもしれない。

『ライ麦畑で捕まえて』以降、彼はグラース家の物語を書き続けたが、ライ麦畑のような機関銃のような文章表現は影を潜めた。短編作家だった彼が、長編で自分の想いを100%ぶつけられたのは、この作品一作だけだった。そう思わせる本作の構成だった。

 サリンジャーファンとしては、『ナイン・ストーリーズ』、『フラニーとゾーイ』の創作秘話をもっと描いてほしかったという気持ちはある。だが、彼の戦争体験の傷跡が、想定外に作品に影響を及ぼしたことを認識できたのは収穫だった。そして、作品が世に出るには、改めて出版社や編集者の意向が大で、文章の修正等、作家もプライドだけでは生きていけないことを再認識した。その生き方ができなかった彼が、隠遁生活を余儀なくされたことも理解できた。
”レジェンド・サリンジャー”の素顔に、少なからず接近したという点では、本作は評価できるだろう。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 未登録
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ