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アンダー・ザ・シルバーレイク (2018)

UNDER THE SILVER LAKE

監督
デヴィッド・ロバート・ミッチェル
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  • みたログ 431

3.02 / 評価:325件

天国への階段を登れなかった未練

  • dr.hawk さん
  • 2018年10月13日 22時55分
  • 閲覧数 1478
  • 役立ち度 10
    • 総合評価
    • ★★★★★

2018.10.13 字幕 T・JOY京都


2018年のアメリカ映画
ハリウッドで夢を追いかけていた青年が失踪した隣人を追いかけるスリラー映画(本当は違うけど)
監督&脚本はデヴィッド・ロバート・ミッチェル


物語の舞台はロサンゼルス・シルバーレイク
いつもならあらすじを書くけど、書きたいことがあるので割愛


物語はサラ(ライリー・キーオ)への執着と、彼女を追うごとに深みにハマるサム(アンドリュー・ガーフィールド)が描かれていく
その道中は「暗号」「都市伝説」「陰謀論」「ホームレス王」「ヒップカルチャー」など何でもありの意味不明な展開が「これでもか」と襲いかかってくる

サラの失踪の真意、そして劇中で繰り広げられる展開の意味とは何か


物語を整理する上で重要なのは、「シルバーレイク」という土地である

ロサンゼルスにあるシルバーレイクは、街の中に貯水湖があり、東にリオ・デ・ロサンゼルス州立公園、南東にドジャースタジアム、西にハリウッドを望む街である

ポップな色彩の街でカフェの落書きですらアート
店舗は多彩でファッショナブルで、独特の雰囲気が漂っている

そのシルバーレイクの「下」、いわゆる「貯水湖の底」には何があるのか


数々の作品の引用やオマージュは私より詳しい人が多いと思うので任せるが、この物語は突飛な展開の連続で疲れてしまう人が多いかもしれない

だがこの街のこと、サムの立場を考えると「現実逃避した若者の悪あがき」であることは一目瞭然である

成り上がる術を忘れたサムは、過去に自分を鼓舞してきたスターたちに囲まれて過ごしている
家賃の滞納で退去命令が出ていて、崖っぷちだがホームレスを見下している

そのホームレスの王に導かれるというのが皮肉が効いていて面白い


サムが見ているのは「希望」と「絶望」であるが、「希望」はほぼ「願望」や「妄想」に近い

サラはサムにとっての「希望」で、彼女が消えた理由は「湖の底に沈んだ(夢を諦めて去った)」からであろう


物語に登場する引用で象徴的なのは、

『百万長者と結婚する方法』
サラの部屋で観る映画

『アメリカン・スリープオーバー』
墓場で野外上映している映画

『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』
サムの部屋のTVから流れる映画

他の作品のネタバレをするのはアレなので関連性は割愛
それぞれが時系列的にサムの状況を表しているようにも思えた


ここからは個人的な解釈になるが、この映画で見せられているものはすべて「死にゆく(あるいは既に死んでいる)サムが垣間見た白昼夢」ではないだろうか

彼が周囲の人間から「臭い」と言われるのは「ホームレス化」しているからではなく、「死体」だからだと解釈した

「フクロウのキス」は「死の接吻」を意味し、彼の前に何度でも現れることで彼を追い詰めていく
さながら「地獄からの招待」であり、彼が抗う理由もわかる

「犬殺し」は「Give a dog a bad name and hang him(悪評を取れば最後)」の諺から来ているのだろうか
「犬殺し」も頻繁に出てくる単語で、この連なりは「悪評」の連なりが致命的であることを意味しているかも知れない

映画であまり殺されることのない「犬」が惨殺されていく街は、成り上がるための卑劣な手段を示しているのかも知れない
彼は犬を殺せないので、悪評で名を上げる度胸もない


「コヨーテ」はアメリカインディアンの言い伝え「コヨーテの法則」から紐解けるのではないだろうか
「コヨーテの法則」とは「師が弟子の問いに答えを与えずに、弟子自らが答えに気づくように仕向ける」こと

コヨーテの後を追うサムは、そこから「明確な答えを与えられずに、自らの解釈で謎に向かう」のだが、彼がこの法則から答えを導けたのはラストシーンである


ラストシーンでは向かいの熟女と一夜をともにしたあと、自分の部屋を眺めている
部屋を出る際に気づかなかった「サラの部屋にあったサインと同じもの」を彼は自分の部屋で見つける

思えばあのサインから始まった謎解きは、「自分を傍観すること」で終わりを告げる

彼がコヨーテに怯えるのは、自分を理解することへの畏れであり、それは「夢破れた者」が、未練を断ち切ることの難しさだったのではないだろうか


いずれにせよ、初見殺しの映画で理解に相当時間を擁した

それぞれの配置の意味を考えて、「ああ、これは『マルホランド・ドライブ』をモチーフにしたハリウッドの現実だ」と気づいたとき、何となくピースがハマっていったような気がした

あくまでも個人的な見解であるものの、それほど外してはいないのではないだろうか


かなり長い(139分)映画ではあるが、展開がまったく読めないので時間を忘れさせてくれる

ただし、ある程度ハリウッドのことを知らないとついていけないのは事実だろう

観る人を選ぶが、面白い作品であることは間違いない

詳細評価

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