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女王陛下のお気に入り (2018)

THE FAVOURITE

監督
ヨルゴス・ランティモス
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  • みたログ 3,070

3.80 / 評価:2587件

アンは王様

  • ata***** さん
  • 2020年2月24日 23時46分
  • 閲覧数 518
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

いろんなことに目を奪われて映画の肝をつかみ損ねそうなひと品。
 そもそも名誉革命後、王位に就いたアンのスペイン継承戦争への取り組みが本筋の話なんだが、このアンに女官の、といっても王の金庫番である、マルバラ公夫人サラが肉絡み骨絡みに絡みついて、側近政治の威力を全開させる。目的は対仏戦の強化維持、反和平推進。そういえば、チャーチル映画二題も併せて放送されて、遂にご先祖様まで増援の対外強硬祭りか?
 さてこれだけでも十分凄みのある話だが、史実も示す通り、こんなサラの失寵と、それにとって代ろうとするアビィの抬頭と政治的対立がまさに魔窟のトライアングルで、見る者の目をなぎ倒す。
 この一見ドロドロ劇を濃厚に彩る王宮のケバい景色が、派手で化粧も気持ち悪い男女、もちろん揃いもそろって高位高官の類であるが、後支えしてくれ、見終わると2~3kg体重が増えるだろう。
 左様、これらの外野の面々と見比べると却って男勝りなサラやアビィの存在が爽やかなほど際立つのである。そこが可笑しい。いわば、アンを巡り古い付き合いのサラとサラの従妹、苦労人、手先、刺客でゆくゆくは政敵、色仇? 癒し仇となるアビィの女三人、三角関係が育って絡んでもつれて、遂にサラとアビィの締め合いにまで至るのだが、それでも両人の政治的意図や理想が、ともすれば主客転倒しそうなくらいの強烈な感情の衝突、愛憎の鍔迫り合いの末に結実する。議論による説得と駆け引きによる押し退きで議決する議会政治とは違った、情実政治の骨頂のような決定過程のエグさを見る者に押し付けてくるのだ。本来感心していてはいけない。怒るべきなのだ。
 こんな名誉が泣く様な革命の末立ち上がった議会だが、どうしてどうして強かで、講和派はアンを絡めとった主戦派サラの弱みと議場では孤立無援なアン攻略のツボとを探るのには余念など無く、サラの目を奪うアビィの才気を見逃しはしない。対して乗ったら乗ったで、乗った脅しに手綱を掛けるアビィの凄みが、話の後半を引っ張る。史実はともかく、軍を操れる卿と軍資金を握る市民と君臨する王の三角関係のもと、議会を場に主戦派講和派が争う背後の、王宮でのロビー戦が妙に納得いく。議会制民主政治事始めのまだ議論より情実が隠然と力を持ってた、実はね。という内幕ものだった。
 しかし、そのさらに帳一枚内側にアンが居るわけで、武力を持つ者と資金を持つ者との分化と並存が対立の弊害を出さぬよう権威ある調停役としてのアンが居るわけで。さんざ内幕を見てきたものとすれば、アホな事だが、こんなアンこそ国家と体制の要であり、アンの安らかなる事こそ国の安定の肝である事に気が付く。全くあんなアンなのだが壊れもせず?転落もせず?死ぬまで7年も王位にあった背景にこんなとんでもない廷臣がおったのだと感心してしまう。その一方、親の因果が17人の子に報いたかのような過酷な宮廷生活を嘘か真か子兎を愛し食べては吐いて凌ぎ、寵愛と弄びのサラとの絡みで紛らした千数百日の末の講和支持のその先でアビィを捕らえたあの手の王の不思議に静かな不気味さに、2時間飲み込まされた事々の気持ち悪さが改めて迫る感じがあった。まあお話はお話なわけだが。

詳細評価

物語
配役
演出
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音楽

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