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えいがのおそ松さん (2019)

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3.89 / 評価:1390件

愉快犯による完全犯罪のお手本

  • bla******** さん
  • 2019年3月20日 22時10分
  • 役立ち度 114
    • 総合評価
    • ★★★★★

製作者…を代表して藤田監督の意図がどれだけ読み取れたかで、見方が全く変わってくる映画です。
最初にはっきりと言いましょう。こんなに賢く、意地悪で、楽しい仕掛けを考える人は中々いません。
ぜひ、皆さんもその仕掛けの中で遊んで頂きたいと思います。

大多数の人が楽しめる作品になっていることは間違いありませんが、映画としての完成度はそれ程高くはありません。
視聴者には状況を推測するための沢山の情報が与えられますが、それらがどこまで価値があるものなのかも曖昧で、全体としては漫然とした印象を受けます。
声優の方の熱演を除いては粗が目立ち、目が肥えた方などには「期待外れ」と感じる人も少なくないと思われます。
しかし逆に言えば、そういった方だからこそ全体に散りばめられた違和感にお気づきになることもあるかもしれません。
おそらく、そういった「作品としての粗さや綻び」の全ては、意図的なものかと思われます。

まず、この劇場版の制作が決まった時点で、本作に与えられた条件を逆に利用する手筈が整えられたのではないでしょうか。
『おそ松さん』は風刺が利いたおバカな深夜アニメです。
児童向けアニメや洋画邦画の王道を作る必要はありませんし、いくら人気を博したアニメとはいえ本来ならばそのような体力もないシリーズ作品かと思います。
しかし、『おそ松さん』は、あえて「王道のストーリー」を作りました。
それも、観た人が十人十色の感想を抱くであろう形にして生み出したのです。
ある人は感動し、ある人は苛立ち、また別のある人は感傷に浸る。
その人が持つ願望に合わせて様々な色に映るように作られているのが上手いところです。
ギャグアニメではありますが、作中にある示唆や余白について考察を試みる人が少なからずいたりと、多角的に楽しめる作品にもなっています。
これはその類の習性を持つ人が「おバカなギャグ作品を長時間楽しめるように」と施された配慮であることは、監督の発言から見ても明らかでしょう。
つまり、『えいがのおそ松さん』は、「どんな意見でも出るよう設計されたアニメ」なのです。

はじめに、監督の意図にどれだけ踏み込めるかで、見え方が変わってくる作品だとお伝えしました。
そうなると自然と、本作のキーとなるキャラクターをどう受け取るかという話になりますが、これは人によって大きく異なるところだと思います。
これは、『おそ松さん』という作品に対する個々の感情の持ち方に依存する部分だからです。
感動する人、ピンとこない人、嫌悪感を覚える人、あえて無視する人、様々だと思います。
例えば一説に言われているように、キーキャラクターを「熱烈なファンのメタファー」として扱うにしても、観衆の感情が一致することはありません。
それが制作陣の好意と悪意どちらの産物であっても、監督の組んだ意図の一部、仕掛けの一つでしかないのです。
作品を支えるモノのそれぞれの側面はその全てが正解であって、一つの事実です。
つまりは、作品自体に風刺があろうとなかろうと「一つの発信に対して、人々がどう受信し判別するのか」という観察眼を持つ大人が、声優を含めた身内を巻き込んで企てた遊びなのです。

『おそ松さん』は、全ての事実を否定せず、ただ利用して人々を笑わせ考えさせ、その様をまた笑って見ているだけです。
そういった見地から見下ろせば、この作品は全く別の様相を見せます。
『えいがのおそ松さん』という作品は、言うなれば「人々の中にある自分の為だけの自由な理解」を吸引するために作られた装置、ということでしょう。
かなりメタ構造的ではありますが、そこまで計算されて作られたものとして認識すると、非常に楽しい作品です。
手の凝った、実に酔狂としか言いようのない面白い試みではありませんか。

年甲斐もなく子供のように熱中してこのギミックに取り掛かってしまったので、あえて「自分の為だけの自由な理解」として述べさせていただきました。
一見、ありふれているように思える「俺たち、いつから大人なの?」というキャッチコピーは実に秀逸です。
正真正銘のお子さんから、大人になりきれない子供、あの頃を懐かしむ大人まで、広く巻き込んだ度量は愉快と言う他ありません。
実に小気味よく、実にいやらしい大人の貫禄で、若い人には作れない部類の作品だろうと思います。

ただ一つ、難点を申し上げるなら、監督のその意図に辿り着くまでにはそれなりに監督について知る必要がある、ということでしょうか。(本来ならば気付く必要もないことですが)
映画を見ただけで完結する作品ではなく、レビューやSNSでの「その時その場の盛り上がり」自体を同時に楽しむ必要もあります。
『おそ松さん』という作品が、世相を風刺した作品であることを考えれば、これはよく考えられた【遊び場の仕掛け装置】であることは、認めざるを得ないでしょう。

詳細評価

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