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ぼけますから、よろしくお願いします。 (2018)

監督
信友直子
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4.23 / 評価:192件

直子の出来るせめてもの恩返しか?

  • fg9***** さん
  • 2020年10月1日 15時57分
  • 閲覧数 461
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

…なんら予備知識もなく観始めたら、ドキュメンタリーだった。
 ドキュメンタリーは、あんまり得手ではないが観てみる。
 …あらすじは、横着をして、解説の次のとおり。
 『大学進学のため上京して以来、東京で一人暮らしをするテレビディレクターの信友直子は、45歳で乳がんを患う。
 母(文子)の支えもあり人生最大のピンチを切り抜けた直子は故郷の両親を撮り始めるが、やがて母の異変に気付く。
 母は2014年に認知症と診断され、90歳を超えた父(良則)が母の介護をしながら家事を行う。
 父は、仕事を辞め実家に戻るべきか悩む直子に、自分の仕事をしなさいと伝える。』
 このお父さんがよく出来た人だな。
 母の介護をすべく、仕事を辞めて実家に戻ろうとする直子に次のように言って諫めるのだ。
 「心配するな。ワシが元気なうちは面倒見るから、お前は好きな仕事を続けて、家には戻って来るな。」
 父の気丈夫さにホッとした直子だったが、認知症を患った母と高齢な父の2人きりでの生活は心配でならず、時折、フラッと様子見のために帰郷するが、その際に、せめてもの恩返し?とばかりに、老老介護の一部始終を記録するように努めるのだった。
 そうこうしているうちに、45歳で乳癌を患った直子を天真爛漫の明るさで看続けてくれた母の認知症が進行していき、家事全般が億劫になり、床に臥す時間が長くなるのだった。
 すると、今まで厨房にすら入ったことのない90歳超えの父親は、料理だけでなく、洗濯・裁縫までするようになり、余暇には新聞の隅々にまで目を通し、語学勉強までする向上心には頭が下がる思いだ。
 洗濯も全自動機能にすれば楽だろうに、何かの拘りがあるのだろう……手洗いでコマメに濯ぎをするのだった。
 認知症が進行しつつある母親は、これまでフツウに出来たことが次第に出来なくなっていく自分に気付き始め、その不甲斐なさから行く末を案じて、「こないなってまで生きとうない……死にたい……」と漏らすようになるのだった。
 そんなある日、その思いが高じて一向に収まらず、駄々っ子のようになってゴネリ始めたので、好々爺然とした良則が「オマエは、気位が高すぎるんじゃい!わがままを言うのもイイ加減にせんかい!!」等々、矍鑠、滔々と必死になって叱り捲るシーンは、双方の熱く痛い思いに胸が塞がれて涙が溢れ出てしまったな。
 90歳も超えて鬼籍も近い年齢ならば、最早諦めの境地にも達していて、言わずもがな……聞かずもがな……で収めても何ら違和感はないのに、2人は死のお迎えが来るまで、真摯に向き合うことを全うしているのだった。
 そんな場面を逃さずに撮影した信友直子は、流石に2人が愛情たっぷりに育んだ娘だったな。
 途中で何度も、撮影なんかストップしてアンタが手助けしてあげなよ……と思ったこともあったが、観終わってみれば、こうして愛する両親の老いていく姿をありのままに画面に写し撮ることが、直子の出来るせめてもの恩返しだったに違いない。
 ラスト、30年ぐらい前の矍鑠として歩く2人と、現在の腰の曲がった2人が歩く姿が重ねて映し出される。
 時は、長いようで短いのだ。
 オイラも古希を過ぎてしまったが、良則さんの域に達するには、あと二回り以上も生き続けなければならないのだ。
 至難の業だな。
 でも、文子さんのように、明るくさりげなく、「ぼけますから、よろしくお願いします。」と家族には言ってみたいものだ。
 身につまされる思いに何度も目頭が熱くなり、非常に心を打たれた作品で4.2点といったところかな。

 (メモ 総レビュー数:3818件、2020年度351作品目)

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