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楽園 (2019)

監督
瀬々敬久
  • みたいムービー 467
  • みたログ 1,366

3.15 / 評価:1092件

曖昧な結末ならもっと綺麗に纏めて欲しい

  • dadadasteady さん
  • 2020年9月26日 16時08分
  • 閲覧数 709
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

吉田修一の原作は未読です。
綾野剛と杉咲花、佐藤浩市の話がうまく噛みあわない違和感が
あったので後で調べたら、2つの短編を繋ぎ合わせたのが
本作だそうで。なるほど納得しました。

Y字路の事件の真相、犯人が誰か、動機…等は一切明らかに
ならないので、それを目当てに観てはいけない作品。
謎が明らかにならず殆どの登場人物に救いが無い話、尚且つ
読み取れたメッセージは誰にでも当て嵌まる人間の醜さ…とも
少し違う特殊なコミュニティの話なので心に残るものは少なめでした。

__________________

■誰のどんな気持ちを主軸に観れば良いのか迷う
差別される側・村八分される側・失踪した少女と最後まで一緒にいた女性
の3者が地方特有の差別意識や集団心理に翻弄される訳ですが
前者の3者が結び付く経緯に説得力があまりありません。
具体的に言うと、紡(杉咲花)と豪士(綾野剛)の出会いから交流までが
駆け足であり且つ早々に豪士は物語からいなくなるので、
紡は何に対し不信感を抱いているのかぼやけてしまっているように
感じました。

①豪士を死に追いやった村の集団心理?
②理不尽なことを行ってくる五郎?
③善次郎を凶行に駆り立てたこと?

もしかしたら3つ全てかもしれませんが、自分自身が体験した
五郎からの辛辣な言葉以外の豪士と善次郎については、
豪士とは突如交流が始まるものの凄く短い仲であり、
善次郎とは祭で少しだけ話した程度のやりとりしかないので、
作品全体を通じて紡の心情が非常に分かりにくくなっています。
(自分だけでしょうか)

■対象となる異質な慣習や人間がやや不明確
移民が受けるいわれなき差別の描写はいいとしても、
地方の村特有の文化には少し違和感。
村八分の文化や「誰かが罪を被って、早く安心したい」という集団心理と
「どうしてお前だけ生きてる?」と紡に吐き捨てる五郎の心情や人間性は
また少し話が異なる。
作品全体で村や地方を一括りにしているようで、
村八分にした人間・五郎は少し枠組みが異なる為、どこを主軸に
観れば良いのかが分かりにくい構成になっています。

■地方の悪習や集団心理の描写について
実際にあった話が根底にあるので仕方がないとはいえ、
地方の村の人間があまりにも知能が低く醜悪な人間に
描かれ過ぎていて少し逆差別的な表現にすら感じてしまいました。
豪士が犯人と特定する過程なんてもう…

■長尺の割に多めの不必要な描写
地方が題材の邦画にありがちな本編にあまり関係の無い祭のシーン、
犬にまつわるエピソードもそこまで必要性を感じないし、
作風と合ってない唐突なヌード…いらないですね。
何より紡の同級生の広呂のエピソードは作品全体に唯一希望を
もたせる意味があるのでしょうが、正直不必要です。

序盤の紡の広呂に対する無関心さや対応の冷たさから
いきなり同じ職場に移ってくる段階である種ストーカーに近い
恐怖や嫌悪感を抱いたのですが、何故か紡がすんなりと受け入れて
いくので尚更無理やりに挿入された話のようで浮いていました。

■救いの要素はいるかいらないか
とことん人間の醜悪な部分だけにフォーカスするならそれでいい。
しかし広呂のエピソードで申し訳程度に希望をもたせても
広呂は本筋に殆ど関係が無いし最終的に村を離れている人間なので
説得力が少ない。中途半端。

■真相
そして、少女の生死と犯人が誰なのかは最後まで明らかにならないまま
終わりを迎えるわけですが、ここが何とも中途半端。
豪士が少女の跡をつけていった描写がハッキリと追加されると、
もう豪士が犯人としか見えなくなる。
多分意図としては違うんでしょうけど。
せめて、腰かけていた姿勢から少女の方向に立ちあがる…ぐらいの
描写にしておかないと、あれはもう豪士が犯人と思い込んでしまう人の
方が多いのではないでしょうか。

濃いめのグレーの描写にされてしまうと、結果論にはなってしまうが
村の人間もまるっきり間違った行動はしていないことになってしまう。
(犯人である可能性が高い豪士を団結して追い詰めたこと)
でもそう考えたとしても、善次郎の件については100%村の人間が
異常な集団心理であることは間違いない訳で、物語に一貫性がなくなる。
つまり、豪士は完全なシロか限りなく中間のグレーの描写で
良かったんです。

■思わせぶりな描写
更に、紡が東京の繁華街で成長した愛華を見かける思わせぶりな描写は
「生きていて欲しい」という願望の可能性が高いでしょうが、
とはいえ…わざわざ一回立ち止まって振り返り微笑みかけてくるのは、
もう思わせぶりな描写の度を越しているような気がします。

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矛盾した言葉になってはしまいますが、
『綺麗に曖昧に』終わらせて欲しかった。

役者さん達の演技は数名を除いて素晴らしいです。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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