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上映中

楽園 (2019)

監督
瀬々敬久
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3.19 / 評価:851件

解説

『悪人』『怒り』などの原作者・吉田修一の短編集「犯罪小説集」の一部を、『64-ロクヨン-』シリーズなどの瀬々敬久監督が映画化。ある村で起こった幼女誘拐事件、少女行方不明事件、養蜂家にまつわる事件を通して、人々の喪失と再生の物語が描かれる。少女行方不明事件の犯人だと疑われる主人公を演じる綾野剛をはじめ、NHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」などの杉咲花や『64-ロクヨン-』シリーズで主人公を演じた佐藤浩市らが共演する。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

12年前、青田に囲まれたY字路で幼女の誘拐事件が発生した。事件が起こる直前までその幼女といたことで心に傷を負った紡(杉咲花)は、祭りの準備中に孤独な豪士(綾野剛)と出会う。そして祭りの日、あのY字路で再び少女が行方不明になり、豪士は犯人として疑われる。1年後、Y字路へ続く集落で暮らす養蜂家の善次郎(佐藤浩市)は、ある出来事をきっかけに、村八分にされてしまう。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2019「楽園」製作委員会
(C)2019「楽園」製作委員会

「楽園」まっとうな人間が壊れる瞬間。その痛みと苦しみのリアルさがすさまじい

 猛烈な負のエネルギーに圧倒された。陰鬱な気分になるが、映画の持つパワーに抗えない。これが日本の、人間の現実だ。

 とある地方都市の集落で、少女が行方不明になる。必死の捜索もむなしく、少女は見つからない。12年後、事件の直前まで少女と一緒だった紡(杉咲花)は、罪悪感を背負いながら生きていた。そして再び、少女が行方不明になる事件が起こる。人々の疑いの目は、集落で孤立する一人の青年(綾野剛)に向かっていく――。

 原作は実際の犯罪をヒントに紡がれたという、吉田修一の短編集。瀬々敬久監督はそのうちの二編を軸に、少女・紡の目線を加えて物語を織り上げた。「誰が事件の犯人か」というミステリー要素を持ちつつ、人間という生き物と、それが形成する社会の恐ろしさにより深く踏み込んでいる。ヘイトや差別、疑心暗鬼の心。誰かを孤立させることで結束を保つ集団社会。舞台となる集落の美しい景色と、その裏にある陰の対比も胸を締め付ける。

 なにより近々の事件を想起させるリアルさがすさまじい。特に、あることから村八分にされていく愛犬家の男(佐藤浩市)のくだりは壮絶だ。疎外された者の痛み、孤独の苦しみ。まっとうな人間が壊れる瞬間。コップの淵ギリギリだった水は、ほんのわずかなきっかけであふれ出し、社会に凄惨な復讐をする。

 ホアキン・フェニックス主演の「ジョーカー」を観たとき、まずこの映画を思い出した。やはり実際の事件をもとにしたイタリア映画「ドッグマン」にも通じるものがある(犬が登場するのも象徴的だ!)。世界はかくも生きにくい。そのなかで誰もが、ほんのわずかな違いで境界を越える。凄惨な事件の裏に、何かを読み取り、何かを変えなければ、同じことが繰り返される。映画たちはそう警告しているように思える。

 それでもこんな世界を、我々は生きねばならない。タイトルと紡の存在に、かすかな希望が託されている。(中村千晶)

映画.com(外部リンク)

2019年10月17日 更新

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