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暁に祈れ (2017)

A PRAYER BEFORE DAWN

監督
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール
  • みたいムービー 80
  • みたログ 288

3.04 / 評価:211件

居場所は忌むべき過去の延長線上にある

  • dr.hawk さん
  • 2018年12月8日 21時41分
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

2018.12.8 字幕 MOVIX京都


2017年のアメリカ&イギリス&中国&フランス合作の映画
実在の人物、ビリー・ムーアの自伝『A Prayer Before Dawn : My Nightmare in Thailand’s Prisons』を基に作られたヒューマンドラマ
タイの刑務所に収監されたイギリス人の囚人がムエタイに出会い、居場所を見つけていく物語
監督はジャン=ステファーヌ・ソヴェール
脚本はジョナサン・ハッシュビーン&ニック・ソルトリーズ


物語はタイにて闇ボクサーとして生計を立てている主人公ビリー・ムーア(ジョー・コール)の様子が描かれて始まる

彼はイギリスからタイに流れ着いたボクサーだが、ドラッグに溺れる毎日を過ごしていた
タイで何とか生計を立てるものの、金は酒とドラッグに消えるだけ

ある日、当局の追及から逮捕されたビリーは、チェン・マイの刑務所に収監されてしまう

そしてほどなくバンコクにあるクロンプレム刑務所へと移送されることになった
そこではレイプ、殺人が顔色変えずに行われる地獄で、贔屓の看守から与えられたヘロインに依存する毎日が待っていた


物語は看守の言いなりになってムスリムへの暴行を働いたところから大きく動き出す
独房に入れられた彼は、そこでランニングに精を出す集団を見つけた
彼らは他の囚人とは違う何かを持っていて、ビリーは誘われるようにその門を叩く

そこはムエタイの養成所で、コーチのステイン(ソムラック・カムシン)が熱心に指導を行っていた

ボクサーであるビリーは自身を売り込み、そこで生き残りを賭けた戦いに挑むことになる

そこは流浪の果てにたどり着いた「居場所」だった


本作の主題は「泥まみれの人生の中で見つけた清涼」であり、居場所としての養成所、そして人間関係としてのレディーボーイ(タイの俗語で性転換した囚人)のフェイム(ポンチャノック・マーブグラン)を得る

そして行方を知らないはずの父からの手紙に感化され、底辺という絶望にいながら人生を見つめ直していく

ラストシークエンスで父との再会を果たすが、そこに登場するのはビリー・ムーアその人である

これは未来の自分が励ましに来ているようにも見えた


本作の見所は「没入感満載の体験型ムービー」であるところだ
ほとんどの会話に字幕はなく、ビリーが理解できる言葉(主に英語)のみに字幕が充てられる

これはビリー目線での刑務所の追体験を観客ができるように仕掛けられた演出である

そして驚くべきは囚人役のほとんどが「元囚人」であり、撮影の舞台は「元収容所」である点である

同じ監房の主であるゲン(パンナ・イムアンパイ)は過去に8年間にわたり収監された過去を持ち、彼の顔のタトゥーはその時に掘られた「本物」である

またムエタイのコーチであるステイン役のソムラック・カムシンはアトランタ五輪のボクシング・フェザー級タイ代表にして母国に初めての金メダルをもたらした国民的英雄である

このふたりの「本物」の存在感と、それに恥じぬ役作りをしたジョー・コールのおかげで、本作は臨場感あふれる等身大の自伝として成り立っている


物語は何となく青春時代を欲望に任せて生きてきた若者が道を外し、とことんまで底辺に落ち、そこから這い上がろうとする姿を描いている

本作はそんな中で、底辺なりの居場所と存在意義を見つけた男の物語として脚色され、未来の自分との接見によってメッセージ性を強くしている

感情のままに暴れまくった彼が自身の体験談を美化したと言えばそれまでだが、美化と言ってもその底辺の描写は容赦ない現実に即している

本作の鑑賞後感は「この生活はしたくない」でOKだと思う

劇的なエンターテイメント性はないとしても、体験型ムービーとしてはこれ以上にない仕上がりだろう


いずれにせよ、居場所を見つけた彼は背中にタトゥーを彫ることによってようやく養成所の一員となった

そこで背負ったものは「自分の死」であり、彼がその場所を手放さなかったのはそこに本当の自分を見つけたからである

ラストシークエンスは未来の自分に会うと同時に、本人からすれば「過去を耐え抜いた自分を抱きしめる」いう意味合いもある

彼が恥ずべき底辺を自書にし、それを映像化に踏み切ったのは自分の人生を「反面教師」にしてほしいのと同時に、忌むべき過去から目を背ける誰かにとっての応援歌でもあると思えた

このラストシークエンスが物語るものが本作の核であると感じた

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 恐怖
  • 勇敢
  • 絶望的
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