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セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー! (2017)

SERGIO AND SERGEI

監督
エルネスト・ダラナス・セラーノ
  • みたいムービー 42
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3.12 / 評価:94件

斬新な国際協力は、崩壊が生んだ共感性だ

  • dr.hawk さん
  • 2018年12月31日 12時10分
  • 閲覧数 528
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

2018.12.30 字幕 シネリーブル梅田


2017年のアメリカ&キューバ&スペイン合作の映画
実在の人物、セルゲイ・クリカレフをモデルに冷戦終結後に翻弄される男たちを描いたコメディ映画
監督はエルネスト・ダラナス・セラーノ
脚本はエルネスト・ダラナス・セラーノ&マルタ・ダラナス


物語の舞台は1991年、ソビエト連邦崩壊後のキューバと、それによって帰る国が無くなった男が勤務する宇宙ステーション「ミール」である

キューバでマルクス社会主義を教えていた主人公のセルジオ(トマス・カオ)は、ソ連崩壊によって社会主義の崩壊を目の当たりにする

教鞭に立っても説得力のない授業は生徒から揶揄され、生徒によってはレポート提出さえ拒否される始末である


彼の趣味は「無線」で、仲間であるアメリカ人のピーター(ロン・パールマン)と交信をするのが唯一の楽しみだった

ある日、彼の無線は1本のメッセージを受信する
喜び勇んではしゃぐセルジオ
そしてその相手は、宇宙ステーション「ミール」の宇宙飛行士、セルゲイ(ヘクター・ノア)だった

セルジオはモスクワに留学経験があり、会話も滞りなくできる

そしてふたりの奇妙な通信は始まった


物語はこのふたりの背景で「壊れゆく日常」が着々と進行し、選択を迫られていく様子を描いていく

ピーターを含めた3人の男は、それぞれ国籍も思想も違うのだが、根底にある人間らしさや愛情には変わりがない

だが激動する世界に翻弄され、またそれぞれの過去が行動を縛ってしまう


セルジオは生活が困窮し、母娘を世話できなくなってくる
信じていた理想は崩壊し、誰からの尊敬もない

ピーターはポーランド生まれのユダヤ人であり、社会主義者であるセルジオを敬遠しだすようになる

セルゲイは母国に残した家族を想うが、国は何もできず、さらに小隕石の衝突で命の危機に晒される


プライドと偏見、その絡み合いの中で、家族想いのセルジオはピーターと連絡を取り、ピーターもまた人道主義の観点からセルジオの提案を受け容れる

その提案とはNASAの助けを借りて、セルゲイを地球に帰還させること、であった


それはセルジオにしてみれば「敵国の助けを借りること」であり、「ミール」はソ連の財産でもある

だが母国が何もできない状況であること、命の保証は徐々に薄くなっていくことを踏まえ、セルジオはセルゲイの提案を受け容れる


物語の主題は「選択」であり、3人は過去に囚われた中で変化を余儀なくされる
変化は時として、価値観の粉砕に他ならない


そんな中で「変わらない象徴」として登場するのがキューバー当局である

そして彼の無線を傍受する謎の男は
秘密裏に交わされた陰謀だと信じ世界から取り残される

実にシュールなエンディングであった


物語は「スペクタクルな救出劇」ではなく、「3人の囚われの解放」を描いていて、予告編で「NASAに助けてもらう」という内容が出てしまっているので、前半の会話劇はやや退屈である


通信メインなので言葉数が多く、また多国籍の言葉が飛び交うので、思ってたのと違うという層はある程度いるかも知れない

もっとも副題とポスターから「アポロ13」とかを思う人はいないのと思うので、気軽に観られるポップコーンムービーのようなテイストは正解かも知れない


この映画では「誰かの掲げた思想」を信奉するあまり、目の前のやるべきことが見えていない男が描かれており、彼らの信条は彼らの中の話であって、他人(特に国籍の違う相手)には意味のないこだわりである

内面と状況を結ぶ関連性は言うなれば愛であり、人間観であって、それらが徐々に融解していく様子は見応えがある


現在のキューバがどのような国に発展してるののかは正直わからないところがあるが、当時の価値観と動向については学べるのではないだろうか


いずれにせよ、宇宙開発自体が冷戦の余波によるものでもあり、その中で貢献してきたセルゲイを蔑ろにしなければならないほどにソ連の崩壊は衝撃的だったのであろう

時折、Google earthのような神の視点から地上に降り立つ様は、それら全てが見えざる手のようにも思え、その上で生きる人間にとっての人生哲学が実に脆いものであることを教えてくれる


見方を間違えば退屈であるが、そう言った「俯瞰」をできる私たちからすれば、壁の向こうのこだわりに過ぎず、それでも総悲観に寄らずにコメディに仕上げた手腕は特筆すべきだろう


思うのは、せめて「NASA関連」は予告から外すべきだったこと

このミッションの難解さを物語から感じられず、また生還にもカタルシスを感じないので、せめて物語のピークである「セルジオの提案」はシークレットにすべきだったのではないだろうか

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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