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YUKIGUNI
2018年11月16日公開

YUKIGUNI

872018年11月16日公開

Dr.Hawk

3.0

ネタバレケルンのカウンターボードにクスッと来る

2019.3.28 テアトル梅田 2018年の日本映画 スタンダードカクテルとして知られる「雪国」の生みの親、井山計一氏のドキュメンタリー映画 監督は渡辺智史 映画の主人公は山形県酒田市にてBAR「ケルン」を営んでいる井山計一氏 大正15年生まれの92歳にして現役のバーテンダーである 表題でもある「雪国」は1959年に発表されたカクテルで、壽屋(現サントリー)のトリスバーにて配布されていた開高健編集の小冊子『洋酒天国』の公募「ノーメル賞」に出品されたものである 「雪国」は第3回ノーメル賞のグランプリカクテルで、ウォッカベースにホワイトキュラソー、ライムコーディアルをシェイクし、ミントチェリーとグラスの底に沈めて、スノースタイルで装飾されている 淡い緑がグラスの底に向けて濃厚な緑に変わり、ミントグリーンのチェリーが核となっている グラスの淵に散りばめられた上白糖の甘さが誘う30度 レディーキラー・カクテルと呼ばれる結構強いお酒である 本作では井山計一氏の半生を描き、その中で家族が抱えてきた葛藤、「雪国」誕生秘話、そして取材中に逝去された妻キミ子さんへの想いが紡がれる そして名うてのバーテンダーたちが観てきた井山計一氏の姿が、彼の人生哲学を浮かび上がられていく この映画は「雪国」がタイトルであるものの、描かれているのは井山家の葛藤であった 特に長女菅原真理子さんの胸のうちと計一氏のキミ子さんへの後悔であろう 水商売の親(当時はキャバレーのバーテンダーだった)で、独立後は夫婦揃って多忙 そんな生活の中で過ごした真理子さんと多可志さん 真理子さんは老舗時計店にとつぎ専業主婦をしていて、BARとは無縁の生活だった まさかこのドキュメンタリー内ではじめて「雪国」を飲むことになるとは驚きである ある意味親の背中を見て育った象徴でもあり、色々あったんのかなと思わせるインタビューだった 言葉の端々に「許せない部分」が滲み出ていて、かと言って一回飲んだぐらいでは溶けてなくなるものでもないのだろう それでも少しばかりは計一氏の周りに人が集まる理由が垣間見れていたらいいのかなと思った 計一氏の周りに人が集まるのは、「雪国」だけではなく人柄であろう オリジナルカクテルを有するバーデンダーというステータス以上に、ストレートに惚けるようなスタイルが「相手に何かを気付かせる」のではないだろうか 近すぎると全てが見えるわけでもなく、遠すぎたとしても何も見えない訳じゃない 誰もが葛藤や悩みを抱えていて、その答えやヒントを探そうと必死になる でも相談相手はすべてを話せる訳ではなく、断片的な情報を出していくのだが、その選別には深層心理が関わっている 計一氏ほどの年齢になるとわかるのだろうか 既に答えがその人の中にあるということを だから普通の会話のなかで、相談者が自然と答えに近いキーワードを拾っているように感じた また計一氏の所作の美しさはバーテンダーとしての哲学が滲み出ていて、どこで力を入れるべきかを教えてくれる 「雪国」は適当に作ったと言われるが、その転機はキャバレー時代のキミ子さんのエピソードなんだろうと感じた カクテルはリキュールとスピリッツの混合であり、それがわかっていれば飲めなくでも作れる ヴィジュアルとしての美しさと、そのハードな構成 シンプルな素材の組み合わせは飾らない(ミントチェリーを底に沈める)という装飾を経てメッセージを強める このアドバイスを授けたのは故・長嶋秀夫さん(BAR門創設者)であるが、「雪国」という言葉の深みと余韻を考えると納得できるというものである いずれにせよ、お酒離れが進んでいると言われる中で苦戦している業界ではあるものの、商業化が進んだために「商品」に余白がないというのが大きな理由だと感じた 「雪国」にはその余白があって、そこにはそれぞれの人の笑顔を映し出すことができる 「雪国」を語るうえで、その偉大な功績よりも誰もが感じるのは計一氏の人柄であり、それは「BARは人なり」という至言にたどり着くのであろう ただ残念かな、タイトルは「雪国」にして欲しかった ローマ字にしたことで「雪国」本来の魅力が伝わっていないのではないかと感じた SNS全盛の時代、お酒文化の再燃を考えるのであれば、入力しやすく(バズりやすい)ヴィジュアル的にもカクテルと計一氏の人柄を想像させる(本来の趣旨に沿っている)方が良かったのではないかと感じた 「雪国」という言葉は古風だけど「日本の冬」を感じさせる だがミントチェリーがその寒さを凌いでいるように、冬の暖かさを感じ取ることができるのではないだろうか 毛筆体の「雪国」の中に「YUKIGUNI」と白ないし黒を走らせる ポスター的にもそっちのようが格好いいと思うのは私だけだろうか?

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