レビュー一覧に戻る
YUKIGUNI
2018年11月16日公開

YUKIGUNI

872018年11月16日公開

mam********

4.0

父と娘の物語

同時期公開中の「世界一と言われた映画館」にも登場するスタンダードカクテル「雪国」の創始者で、92歳にして、なお現役のバーテンダー・井山計一氏。山形県酒田市在住。「世界一と言われた映画館」の監督が撮影を担っている。 こちらの方があちらより、濃度も質感も映画的だった。撮影期間中に井山氏の妻が亡くなるなど、長期間ご本人を追っているさまが伺え取材の幅も広い。あちらがこちらから派生したのだろうか。こちらはナレーションが小林薫さんで、もちろんかっこいいのだけれど、どうしても「美の巨人たち」に見えてしまうという難はあった(笑)。 今なおご健在の井山氏と奥様の話はとても魅力的だが、本作の核をなしているのは父と娘の話だ。水商売で忙しく働く両親のもと良い思いをあまりしてこなかったことを率直に語る娘さんの姿が胸を打つ。娘さんは父の作ったお酒を一回も飲んだことが無かったとか。「主婦としてずっとやってきたから」(バーなどには行くことがない)という言葉から娘さんの信念が伝わってきた。「父は幸せな人生だと思う」とやや突き放し気味に語る娘さんと父の真の和解がなったのかどうか。そこは観る人次第ということで。 井山氏自身はまったくお酒を飲まないらしい。バーテンダーという職業、中々奥が深い。また、井山氏や、日本中に知られた映画館「グリーン・ハウス」の他、フランス料理店を経営していた佐藤久一氏ら、粋な人物たちが生まれた酒田という港町には興味を持った。

閲覧数607