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ゴッズ・オウン・カントリー
2018年12月2日公開

ゴッズ・オウン・カントリー

GOD'S OWN COUNTRY

R15+1042018年12月2日公開

chu********

4.0

神の恵みし豊かさを、再び手にせんことを。

代々守ってきた家業が昔ながらのやり方では立ち行かなくなり、後継者不足や過疎が問題になっていると想像できます。 神の恵みし国。今となっては皮肉な響きか…? 初めに頭に浮かんだ言葉は、「殺伐」でした。 ツバを潤滑剤にして突っ込むあまりに生々しい行為はセックスというより獣の交わりで、正直ギョッとした。でもジョニーは、酒とソレしか、やり場のない自暴自棄な感覚を紛らわす方法を知りません。 「お前は大黒柱なんだから」という祖母の言葉にプレッシャーを感じながらも、何とかその役割を担おうとするけれど、先細りの将来は目に見えています。 褒めたり礼を言う代わりに「羊を見てこい」「早く石垣を直せ」と、つい命令口調になってしまう父ちゃん。急に不自由になった我が身の歯がゆさ・息子に仕事を教えてやれない焦りが元来の不器用な性格に輪をかけてしまい、ジョニーとの関係はぎこちなくなるばかりです。 父ちゃんもばあちゃんもジョニーも愛情はあるんだけどね…家族って、時にこじれるね。 ゲオルゲとの付き合いも、一筋縄ではいきません。最初は取っ組み合いみたく力でねじ伏せる感じ…一歩間違えると犯罪じゃねーか?みたいな(汗)。 それが、イライラするくらい少しずつ変化していく。すべてを諦めて頑なに無表情だったジョニーの目や口元が、ちょっとだけ緩む。つられて私も頰が緩む。 農場出身のゲオルゲは、季節労働で居場所を転々とせざるを得ない根無し草的生活。家畜の知識も仕事の能力も高いのに、「移民」としかみなされない。 羊にはめっぽう優しいが(子羊がめちゃカワイイ)、瞳の奥の孤独が濃い。その孤独な瞳で、同じ轍を踏みかねないジョニーを見ている。 同性愛とか男同士のラブシーンが(それが特別視される時代ではないと個人的には思うが)取り上げられがちですが、遠慮なく描かれているのは、閉塞感や不安でがんじがらめになるしんどさです。 ジョニーもゲオルゲも父ちゃんもばあちゃんも、将来が見えない…。見えないくせにはっきりしているのは、希望より危機感。しんどいよねぇ。 「俺は変わろうとしている」。ゲオルゲにやっと弱みをさらけ出し、ジョニーは協力を求めます。 家業も二人の関係もこれからが正念場だけど、将来が不安でたまらん派の私としては応援せずにはおれません。 決して楽な暮らしではないけれど、見慣れているはずの景色に思わず息を飲んで立ち尽くしてしまう。 そんな大地で、神の恵みし豊かさを、再び手にせんことを。 余談。畜産を知らない私なぞは、ビビるシーンも出てきます。生半可な気持ちではできん仕事やわ。己の食べ物を何一つ作ることができない自分には、感謝の言葉しかありません。

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