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22年目の記憶
2019年1月5日公開

22年目の記憶

MY DICTATOR

1282019年1月5日公開

つとみ

2.0

道化の涙の先に見えるもの

どうやらこの映画はソル・ギョングの演技を楽しむ映画らしい。それは別に構わないと思うが、肝心なのは彼の演技を通して何を感じるかである。 そして、その肝心な部分がぼやけてしまっている感は否めない。 金日成になりきってしまった父を見つめる息子の視点で物語は紡ぎだされるが、息子のテシクが父の姿に何を思うか?ということよりも父・ソングンがいかにして金日成になったか?の方に多くのシーンが割かれる。 さらに言うなら金日成になってしまった父とのエピソードはほとんど無く、父と息子の葛藤や解離は描かれない。 なんだかバランスの悪い構成なのだ。 父の愛に気づいた息子が、家族の素晴らしさに目覚めるというストーリーの中で、核になるはずの息子に全く焦点が当たらない。これで観ている側に感情の高鳴りを期待する方が無理というものだろう。 それよりはむしろ金日成となってしまったソングンを取り囲む一部として、脚本を担当した学生や演技指導を受け持った教授のような立ち位置として、父の狂気を見つめるキャラクターであった方が全体のバランスはとれていたように思う。 道化として過ごしてきたソングンにスポットを当てたかったのならば、そうすべきだった。 逆に息子・テシクの変化と成長を観せるつもりなら、父に翻弄された日々と葛藤を主軸にして、父がどのように金日成になったかという部分は抑えた方が深みがあったと思う。 演技に見応えがあっただけに、ちょっと残念な映画だった。

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