ここから本文です

上映中

アルキメデスの大戦 (2019)

監督
山崎貴
  • みたいムービー 1,334
  • みたログ 4,655

4.12 / 評価:3,876件

ブレない演出、迫力の映像、納得の力作

  • うろぱす副船長 さん
  • 2019年7月27日 12時14分
  • 閲覧数 4367
  • 役立ち度 307
    • 総合評価
    • ★★★★★

私の様な軍オタが見ても見応えのある力作だった。この映画の最も評価出来る部分は似非平和主義ではなく時代の真の姿に迫ろうとした点だ。

戦勝国であるハリウッド製戦争映画は痛快である。劇中に登場する米軍兵士はスーパーマン的カッコよさであり観客は勝利の美酒に酔いしれる。アメリカ人は米軍の圧倒的勝利に喝采出来るのです。

しかし、敗戦国である日本の戦争映画は大半の作品が自虐的歴史観とお涙頂戴に終始する。戦争に負けた以上、勝利の映画は撮れず”敗北の美学”しか描けない。それは情けない反省の記録でしかない。

自虐的歴史観では正しい歴史認識を学べない。

その典型的な描写が山本五十六の描き方だ。山本は自ら海軍兵学校を志した生粋の軍人である。しかし、多くの映画やドラマでは山本は平和を望んだ反戦主義者だったと描かれる。

そこには本質的な矛盾がある。反戦平和思想の持主なら職業軍人になったりはしない。まして山本は海軍のトップにいた。観客はその矛盾を見抜く。

しかし、「アルキメデスの大戦」は山本五十六を戦争を辞さない軍人として描いた初の作品ではないでしょうか・・・。山本は戦艦は時代遅れであり空母と航空機を中心にしてアメリカとの戦争に備えようとしていた。真珠湾攻撃もミッドウェイ作戦も山本の構想した作戦だった。反戦主義者なら真珠湾を攻撃したりしない。決して反戦思想で戦争に反対だったのではないのです。

本作の徹底した冷徹なまでのリアリズムの追及は山本を平和主義者として描いた映画の典型と言える役所広司主演「山本五十六」とは対照的である。
役所広司版では山本が”真珠湾攻撃は失敗だった”と言うセリフがある。これはドン引きだった。ここまでして軍人である山本を反戦平和主義者に見せようとしていた。

好戦的な人物では平和な時代の理想的なリーダーとして相応しくない、というスタンスが根底にある。そのスタンスが山本五十六は反戦平和主義者という誤ったメッセージを戦後世代に与え続けて来たのだ。

私の様な軍オタはそんな典型作である役所広司版は生温く、そして胡散臭くて付いていけなかったのだ。しかし、役所広司版とは全く事なる視点で描かれた
「アルキメデスの大戦」の世界観には思わず引き込まれてしまう。

悪役として描かれる事が多い永野修身が山本の理解者として好意的に描かれているのも過去の作品とは一線を画している。また、実在の平賀譲や藤本喜久雄をモデルにした造船関係者の海軍内部での対立構造なども非常に上手く描けていて興味深い。

前述しましたが本作は決して生半可な形だけの似非平和主義の映画ではない。時代の本質に迫ったブレない演出・製作姿勢こそが本作の特筆されるべき点であり観客に深い感銘を与えている。

そして絶望的な国力差にも関わらず対米戦争に突き進んだ当時の日本の姿が垣間見えてくる。フィクションながら史実も取り入れた脚本は重厚かつ緊張感に満ちており最後までダレる事なく最後まで一気に見せてくれる。


補足
1)原作の漫画は長編なので映画が一部抜粋の演出になってしまったのは致し方ない。原作も素晴らしいので御一読ください。

2)三段甲板の「赤城」やS字型煙突の「長門」が登場して軍オタには嬉しい配慮

3)冒頭の戦艦「大和」の戦闘シーンは迫力満点で秀逸、これだけでも本作は鑑賞の価値がある。VFXが特異な山崎監督の真骨頂だ。

「永遠の0」より更に進化したVFX映像で戦争映画マニアも納得の水準である。
出来ればもっと長い時間をかけて沖縄特攻作戦を描いてくれればよかったのだが。

4)主人公の櫂直は海軍主計少佐という設定だが主計科の士官が主役というのも過去の作品で記憶がない。普通は海軍兵学校か予科練が主人公だ。

海兵出身者が絶対的に優越されていた海軍で主計科士官が主人公というのは実に痛快だ。主計科を示す制帽の白線も正確に表現されていた。

5)山本五十六を演じた舘ひろしもサマになっていた。

6)敢えて本作の粗探しをすると「大和」艦名を平山造船中将が命名した点。

帝國海軍の艦名は海軍大臣が複数案を提示して天皇が決める事になっていた。「大和」の場合、時の海軍大臣であった吉田善吾が艦名候補をあげ昭和天皇が決定している。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 未登録
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ