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映画 少年たち
2019年3月29日公開

映画 少年たち

1042019年3月29日公開

cer********

5.0

ネタバレ追悼

ジャニーズの世界観というのは社長であるジャニーさんの頭の中にあるもの、という認識を私はしてるんですが映画「少年たち」は物凄く純度の高い「ジャニーズ観」が溢れてます。「わけのわからない世界」で最高でした。ジャニーズの舞台って基本は「わけがわからない」んですよ……なにが他の舞台と違うのかといえば「わけがわからない」ってとこだと思うんですけど……ジャニーズ原作ジャニーさんのミュージカルというのは「話の筋はなんとなくあるけども少年たちが傷ついて(時には死んでしまったり)だけども残された人たちはきらきらとした時を生きる」みたいな……「狐につままれた」みたいなミュージカルなんです。光一さんのSHOCKは2005年にその「わけのわからなさ」を放棄して今の「筋の通る舞台」になってするんですがもともとSHOCKはMASKという少年隊の舞台からの派生なので最初は「わけのわからん舞台」だったんです。一応筋はあるんだけどショーがとめどなく続いて若い子いっぱいでてきてわーわーやって歌があったり踊りがあったり脱いだりコントぽいものがあったりだけどもなんとなーく「物語」的なかんじになってる。見た後に「なんかよくわからんけどすごかった」という感想を抱く舞台、それがジャニーズ純正ミュージカルです。滝沢くんがやってた「滝沢歌舞伎」はそれをいい意味で継承してて彼が後継者になるっていうのはすごく納得。ちゃんとジャニーさんの思うところの「わけのわからなさ」を引き継いでる。光一さんの舞台というのは「意味がある」ものになってるのでその意味でジャニーさんの思う「至上のミュージカル」とは違うんだろうなと思います。これは好みの問題であって私はSHOCKが好きなんですが、ジャニーズらしいミュージカル、と言うなら滝沢くんのやってる舞台のほうがより「ジャニーズっぽい」と思います。 映画「少年たち」のあらすじは少年院に放り込まれた少年たち、それぞれ重い過去のある彼らが出会い反発し、けれども仲間になり最終的には仲間のために脱走を企てるという話です。ネタバレすると、脱走を企てた主人公格の男の子は仲間を庇って死にます。 そういう話です。 あらすじ読むとなんとなく「ちゃんとしてる感」があるかもしれないんですが実際見ると「なぜ踊る?!何故歌う!?何故そこで!?」みたいなのが盛り沢山です。だから真っ当な感覚でジャニオタじゃないひとは見ても「は?」ってなる気がします。ジャニオタ的にはどんとこいです。筋は一応そういうのがあるというだけで、だけど多分一番言いたいのは「少年期の輝いている時間はもうこの時だけしかなくて、それは覆せないし刹那のものだから尊くて美しい」てとこなんだろうなと思います。ジャニーさんがジャニーズ帝国に求めてるのはその「刹那の美しさ」なんだと思う。どう足掻いても年を取ったら得られないもの、若かりしときにしかないもの、の「現物化」をジャニーさんはやってるんだろうなと。 だから正直あらすじは二の次で「こうあれば美しい」という彼の美学がぶっこまれてるのでそれは「少年の死」によって完成されるという。個人的にジャニーズ純正舞台って私が思うに唐突に「死」が出て来るんですが、その「死」は少年の青春期を彩るものであって「死」そのものになにか意味があるかというとそうじゃない気がしています。 要するに「耽美」に近い感覚があってそれを体現するには「死」というスパイスも厭わない的な、そういうもののような気がします。「死」が彼らを美しく彩る、というか。 だから映画「少年たち」を見たときに荒唐無稽な中にもジャニーさんが生涯追い続けているだろう美学がここぞとばかりに溢れんばかりに盛り込んであって、思わずそれで泣きました。此処まで自分の人生をかけて自分の思う「美しいもの」を突き通せるのってすごいな。と。 しかもこの映画全編を通して「証人」的立場を演じるのは横山裕なんですよ。事務所の中で唯一ジャニーさんから貰った「裕」という芸名を冠している横山君。それが最後、彼らの残像を胸に抱きつつ死んでいく姿は、まるで「ジャニーさん」の生き様を表しているようでした。エモいとしか言いようがない。それを自身の代名詞でもある「YOU」=「横山裕」に演じさせるところが。 ジャニーズイズムが溢れすぎてて凄い映画でした。なんかほんと、この「わけのわからないもの」を尊く見せて来るの意味がわからんなと思うんですが、「意味のあるもの」が「価値のあるもの」でもないんだよなとこのイズムを目の当たりにするたびに常識をぐわんぐわん揺さぶられる感じがあるのでした。 一人の老人が追い求め続ける「美学」がとんでもない。という話。 ジャニーさん今まで沢山の夢をありがとうございました。 貴方が思い描いた世界は唯一無二で、けれども荒唐無稽な、それでも最上級の尊い場所でした。 ご冥福をお祈り申し上げます。

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