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こどもしょくどう
2019年3月23日公開

こどもしょくどう

932019年3月23日公開

Dr.Hawk

4.0

ネタバレ現実を受け入れることが再生への第一歩

2019.4.11 テアトル梅田 2019年の日本映画 訳あり家庭の子どもたちの交流によって「子ども食堂」が誕生するまでを描いたヒューマンドラマ 監督は日向寺太郎 脚本は足立紳&山口智之 物語は主人公・高野ユウト(藤本哉汰)とその友人・大山タカシ(浅川蓮)が部活動に励んでいるところから描かれる 小学5年生のユウトは軟式野球の補欠 タカシは消極的な性格と家庭事情からイジメを受けていた ユウトはタカシのいじめを見て見ぬふりをするしかなく、タカシもただ耐えるだけ 「普通にすればいいのに」というユウトの言葉はタカシには届かなかった ある日ふたりは、河原に止まっている一台の白い車を見つける そこには同じ年ぐらいの女の子とその妹、そして父親らしき姿があった 姉の名は木下ミチル(鈴木梨央) 小学5年生だったが学校には行けておらず、母は行方知れずである 妹のヒカル(古川凛)は小学生になったばかりで、時折「お母さんに会いたい」という だがそれが叶わぬことをミチルは知っていた 物語は彼女らが車中生活をしていることを知ったユウトが、自分の給食や食事の一部を施すところから動き出す 何かをしてあげたいが何をどうしたらいいのかわからないユウト 自分のものを分け与えることが、この時点でユウトができる最大のことだった 「子ども食堂」とは「子どもが一人でも利用ができ、地域の方たちが無料あるいは少額で食料を提供する場所」のことを指す 「孤食(子どもが一人で食事をすること)」の解決や貧困家庭へのサポートという側面があり、第1号店は東京都大田区東矢口にある「気まぐれ八百屋だんだん こども食堂」とされている この映画のラストシーンはこの「子ども食堂」誕生を描いているのであるが、映画本編はそういった活動のアピールの場ではなく、「子ども目線による社会の不条理」を描いている タカシは育児放棄の貧困家庭により不遇を受け、ユウトが面倒を見たりするが、大人である両親は食事の提供にとどまる 劇中でミチルたちをどうするべきかを言い合うのだが、「家庭の事情に他人が踏み込む線引きの難しさ」を子どもであるユウトには理解できない それは「困ってるなら助ければいい」という単純なものではなく、「恒久的に問題を解消できるか」という難題が降りかかるからである ユウトの家庭が裕福であるわけでもなく、子どもふたりを抱えて家族経営の食堂を営んでいる タカシに無償で食事を提供するだけならまだしも、見ず知らずの姉妹まで抱える余裕はない(タカシはユウトの幼馴染という関係性がある) 恒久的かつ根本的な解消は行政でも難しく、それが制度化すると甘えたり悪用したりする家庭も出現する 元々、子どもの孤食や育児放棄はその親に原因があり、セーフティネットとして機能させるのには限界があるのである この物語はそう言った子どもの不条理に対して、「現実を直視する」ことを目的としている 傍観者としてのユウトの変化は我々に突き刺さる難題として、そして物語のメインは「ミチルが現実を受け入れる」という帰結へと向かっていく 12歳の子ども、特に思春期に差し掛かり身体の変化も促される年頃に、わがままな無垢がのしかかる 親に捨てられたという現実を理解できるミチルにとって、ヒカルの希望は心が追いつかない、あるいは追いつきたくない葛藤を生み出す 伊豆ホテルに行き、そこで両親の不在を確認することは「親に捨てられたこと」を直視する瞬間である 母との思い出が終わる瞬間 だがそれこそが再生への一歩になり、言うならば「悪しき通過儀礼」となっている そしてミチルたちは行政によって保護され、児童施設へ赴く このシーンで母・佳子(常盤貴子)が「ちゃんと見てなさい」と言うのは、「助けるということの現実」と「捨てられた子どもの末路」であり、それは同時にこの映画を観ている大人たちに向けてのメッセージであった いずれにせよ、子どもの不条理を解消するのは大人にしかできない 気づいた人が行動を起こすしかないのだが、その行動には責任が伴う また子どもに安易に声を掛けられない風潮もあり困難を極めている こう言った不条理がなくなることは決してなく、それがタカシの両親のような親の幼児性のみならず、まったくその気配を感じないミチルの両親ですらそう言った事態へと発展してしまう 彼女らの不条理の背景がまったく描かれないのは、不条理には理由がなく、どんな家庭にでも訪れる可能性があることを示唆している そう言った意味では、対岸の火事などではなく、一度歯車が狂えばどこの家庭にでも起こりうるというメッセージが込められているのだと感じた わかりやすい理由があるほうが、ある意味で再生への道は近いのかもしれません

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