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バイス (2018)

VICE

監督
アダム・マッケイ
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3.47 / 評価:1238件

腐った愛国心

大統領選挙で盛上がっているこの時期に是非おすすめしたい1本がこれ。ジョージ・W・ブッシュを影で操った副大統領ディック・チェイニーの半生を描いている。一見現職大統領トランプとチェイニーを重ねたリベラル臭の強いプロパガンダ映画の体裁をしているが、そうともいいきれない。師匠のラムズフェルドと共にネオコン政治家の代表格といわれるチェイニーが、ブッシュ・アメリカをイラク戦争へと導いたことは間違いない。しかし、9.11の分析結果を専門家から説明され、世界の覇権を握ったアメリカがいかに危険に対して無防備であるかに気づき、「何とかして国民を守らばければ」と思った気持ちには嘘偽りはなかったのではないか。映画の背後にそんな演出意図を感じるのである。

うざったい議会手続きなどをいちいち気にしていたらアメリカは崩壊の危機に瀕する。そう思ったチェイニーは合衆国憲法に記載されている「一元的執政府論」を拡大解釈し、大統領への権力集中を図るのである。専門家を呼び寄せて法律的に問題がないかどうかを細かく精査していくやり方は、いかにも法治国家の米国らしい。しかしその後、大量破壊兵器の存在をでっちあげ、アルカイダとイラクを強引に結びつけ戦争をけしかけたのは誰がどう見てもいきすぎだ。軍産複合体ハリバートンとの癒着やジュネーブ協定を無視したグアンタナモにおける拷問などは問題外。かくして共和党は弱体化し、リベラルなオバマ民主党政権へと引き継がれるのである。

今回の選挙を見てふと感じたのだが、今までいわゆるポピュリズム戦略をとってきたのは米国民主党の方であり、トランプはむしろそれを真似たやり方で政権奪取に成功したのではないか。カーターの太陽光発電や、オバマケア、そしてバイデンの反トランプキャンペーンなど、口当たりがよく一見それが正しいことのように思えるが、真意が別のところにあるのは明らか。郵便による期日前投票が多くなると見込むや、予め郵政トップを共和党系にすげ替え、コストカットを理由にポスト総数や郵政人員を削減、僅差で負けることを想定し連邦最高裁判事の空席に保守系バレット氏を事前に送り込むなど、(あくまでも法律の範囲内で)下院の決選投票に向けてぬかりなく備えていたのはもっぱらトランプ共和党陣営の方なのである。

バイデン親子のチャイナエナジーとの癒着問題も事前にリーク、たとえバイデンに政権が渡ったとしてもそれをネタに中国がバイデンをゆすることはなくなったわけで、諸外国には都合が悪い保護関税施策が効を奏し国内の失業率は歴史的低さをキープ、BLEXITと呼ばれる黒人・ヒスパニック層のトランプ寝返り票もかなりの数にのぼったという。チェイニーのように新しい戦争をおっぱじめることもなく、自分が思うに、リベラル系メディアにより(誰がやっても結果同じだったと思うが)コロナ対応の不手際の責任を負わされることさえなければ、無策のバイデンとは互角、今回の選挙ではもしかしたら勝っていたかもしれないのである。

テイラー・スイフトやらレディ・ガガの応援といったポピュリスト戦略以外、目新しい施策を具体的に何ら打ち出していないバイデン民主党政権。国際協調とは聞こえがいいが、アフターコロナの時代に保護貿易主義抜きに国内低失業率をこのままキープするのはまず不可能。トランプに対しては大人しくしていた習近平も、バイデン組みやすしと見ればすかさず覇権行動を繰り返すようになるだろう。(金にものを言わせたチャイウッド映画がまたぞろ幅をきかせるのかもしれない!?)そして民主党サンダース門下のプログレッシブ派議員が閣僚の重要ポストを担うようなことになれば、GAFA解体をはじめとする社会主義施策によりアメリカの左傾化はもはや避けられなくなるだろう。

「人気者になりたければ映画スターにでもなればいい。毎晩安心して眠れるアメリカ国民の生活を第一に考えて行動しただけだ。謝るつもりはない」(ディック・チェイニー)

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 恐怖
  • 知的
  • 絶望的
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