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荒野にて (2017)

LEAN ON PETE

監督
アンドリュー・ヘイ
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3.58 / 評価:195件

自分を愛し抱き締めてくれる人を求めて

  • TとM さん
  • 2021年3月23日 9時41分
  • 閲覧数 105
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

日課としているらしい朝のランニングから始まりチャーリーの生活と、デルの元での仕事という、いわゆる日常を描く前半。
真面目で性格も優しいチャーリーがこの段階では何を求めているのかは見えてこない。良い父親とは言えないかもしれないが父との関係はそれなりに良好なようだ。

そして物語が半分も過ぎた頃にやっとピートと共に伯母のいる地を目指し始める。

チャーリーがピートに聞かせる思い出話などからチャーリーが求めているのは家族と平穏であることがわかり始める。
しかし、父の死で元の家に居られなくなった。デルのところでは自分と違う考えの人たちであると思い知った。荒野の一軒家でもやはり自分とは違う世界の家族だと知った。
どこもチャーリーの居場所ではないのだ。

この辺りで重要になってくるのが家族写真だ。幾度となく登場する様々な家族写真は、そこがチャーリーの家族となるべき場所ではないと教えてくれる。

ここで自分は一体何を期待してしまったのだろうか。チャーリーがピートと共に荒野を進む中で、漠然と上手くいくような希望を感じてしまった。
どう考えても上手くいくはずもないのにだ。
そして突如として訪れた希望を打ち砕くピートの死。
私は唖然とし、絶句して、嘆き悲しみ、放心した。チャーリーが受けたであろうショックと同じように。
ピートはチャーリーにとって父であり自分でもあった。最後の心のよりどころであった。家族と言えるような存在だった。
それを失う絶望はいかほどのものだろうか。まだ15歳の少年には辛すぎる現実。

ホームレスのキャンピングカーに招かれたところで、父との出来事の繰り返しが起こる。
チャーリーが仕事で得たお金に対して、父は何も言わず、チャーリーが自分の稼ぎで買ったものを黙って受け取ってくれた。
同じように、チャーリーが自ら外で仕事を得て稼いできたお金を、寝場所を提供してくれたホームレスの男は酔いに任せて奪った。
そのあとチャーリーはバールを手にし、父が襲われていたときに出来なかった、大人への攻撃を成す。
このキャンピングカーがチャーリーの家族ではないと示すと共に、チャーリーが悔やんでいた、自分のせいで父が死に家族を壊してしまったのではないかという思いを乗り越えさせた。

ついに伯母に出会い、理想の家族と語ったチームメイトと同じように伯母が焼いたパンケーキを食べた。
壁にはチャーリーも写っている家族写真。求めていた家族と平穏がここにはある。
泣き崩れるチャーリーを抱き締める伯母の姿に、チャーリーが本当に求めていたものは、場所や仲間ではなく、ただ抱き締めてくれる人、愛情だったのだなと気付いた。

そしてエンディング。
ここまで大事な要素として「走る」というのもあった。
馬が走るデルのところはチャーリーの居場所ではなかったし、荒野の一軒家ではレースゲームに興じていてやはりチャーリーの居場所ではなかった。
日課のランニングを再開しチャーリーはオープニング同様走るが、立ち止まり振り返る。
これまでの出来事に思いを馳せながら、ここが自分の居場所だと確認するかのように。


暖色の光で穏やかな印象の前半。現実的で殺伐とした後半。その中で微かに描写されるチャーリーの心。
全体的に繊細で、触れたら壊れそうな華奢さのある作品だが、真面目で優しく繊細なチャーリーを体現しているようで良かった。
作品も観ている自分もチャーリーに寄り添っていたなと感じた。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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