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マイ・ブックショップ (2018)

THE BOOKSHOP

監督
イザベル・コイシェ
  • みたいムービー 195
  • みたログ 274

3.63 / 評価:206件

節度ある美しい映画だが、ラストの展開は?

  • じゃむとまるこ さん
  • 2019年9月25日 23時13分
  • 閲覧数 297
  • 役立ち度 5
    • 総合評価
    • ★★★★★

1959年のお話、場所は海に面したイギリスの田舎町。
階級社会で貧富の差が激しく、町の実力者が幅を利かせている。

そんな田舎町に書店を開こうとする戦争未亡人であるフローレンス、自分たちの書店を持つことは夫の生前からの二人の夢だった。
この町にあるオールドハウスという建物が彼女の夢をかなえてくれる場所、それは素敵な建物だった。
という出だしだが、彼女はそこで書店を営んでやっていけるかどうかの下調べはしていないように見える、この時代背景の中大きな問題だ。

案の定障害が立ちはだかるが、それはガマート夫人という町の実力者。
予想通りの展開だが、まあこのガマート夫人の偽善者ぶりと言ったら典型的です。
その典型的というのは1959年ではなく今でも全く変わっていない。
歴史的な文化施設は行政が接収できるという法まで裏から手をまわして作らせる。自分が計画していたアートセンター設立を邪魔するものはゆるせない、どんな手を使っても自分のものにする・・・・って、卑近な例を近年日本でも見聞きしたような?
ガマート夫人が許せないのは、自分以外のものが文化教養に携わること、自分だけが知性も教養もある文化人であり、町のみんなはその前にひれ伏している、そこに知性を持ち込む異質な人種は排除するしかないということなのでしょう。

つまりは理不尽なのだけれど、フローレンスはあくまでも真正面から立ち向かう、「あなたは正直すぎるわ」確かにそうなのだ。
では、彼女は負けたのか、と言えば、そうだけれど、そうでもない。

その街で唯一の理解者ブランディッシュは人嫌いだ、彼とは本で結ばれていく、老人の彼とフローレンスの間にあったもの、それは紛れもない愛だろう。
彼らはとても似ていた、しかしブランディッシュは人間に絶望し閉じこもっていた、その絶望は希望に変わるが、悲しい出来事が待っていた。
彼もまた世俗を渡り切れない純粋さを持っていたのだ。

この映画、レイ・ブラッドベリに捧ぐ、みたいなサブタイトルがあっても良いくらいだ。

フローレンスが選んだ本、その中でブランディッシュが気に入ったのはブラッドベリだ、そして彼は「たんぽぽのお酒」が届くのを待ちわびている、彼らが似た人種であることがわかる。
そしてまたこの映画の結末には意外なドンデンがあり、これを良しとするかどうかはともかく、明らかに「華氏451度」を意識している。

フローレンスは負けたわけではない、その本に対する大きな思いは受け継がれていたのだ。
このドンデンは、えーーーー?というものだったが、最初から仕掛けられていた、なので思い返せば布石はあったのだが思い至らなかった、そしてナレーションの人物も。
ナレーションは映画「華氏451度」のジュリー・クリスティであるらしい。

この映画はエミリー・モーティマーの抑えた静かな演技が良いです、ビル・ナイもとても良い味わい。
憎々しいガマート夫人はすべてのものを手にしているように見える、でも、愚かで凡庸な夫しか持っていないのね、という女性監督ならではの皮肉が利いていると思います。

英国の風景良し、書店の佇まい良し、エミリー・モーティマーの衣装も素敵で色彩センスがとても上品です。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 勇敢
  • 知的
  • 絶望的
  • 切ない
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