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マイ・ブックショップ (2018)

THE BOOKSHOP

監督
イザベル・コイシェ
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3.63 / 評価:204件

悔しくて。ただ悔しくて。

  • tak さん
  • 2019年11月10日 1時07分
  • 閲覧数 70
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    • 総合評価
    • ★★★★★

夫の死後、彼との夢だった書店を開くことをフローレンスは決意する。時は1959年。彼女は、イギリスの田舎町にあるオールドハウスと呼ばれる中古物件を購入し、準備を進めていた。ところが、地元の実力者ガマート夫人はオールドハウスを拠点に文化センターを作る構想を持っていた。その町に書店は長い間なかったので多くの人が訪れるが、ガマート夫人の嫌がらせは執拗に続く。味方は店を手伝ってくれる少女と、屋敷に何十年もこもって読書に没頭する老人ブランデッシュだけ。推薦本を送ってほしいというオーダーをきっかけに、彼女はブランデッシュと親交を深めていく。

エンドクレジットが流れる中で、こんなに悔しくて涙があふれそうになった映画はない。実現のためなら法も動かし、人も抱き込むガマート夫人のやり口に追い詰められていくフローレンス。映画の最後に救いはあるのだが、その直前に黙って町を去るフローレンスの姿で胸いっぱいになったばかりなので、その救いに胸をなでおろす余裕がなかった。「世の中には滅ぼす者と滅ぼされる者がいる」とナレーションが劇中流れるけれど、現実ってヤツはほんとに厳しい。イザベル・コイシェ監督作の代表作「死ぬまでにしたい10のこと」でも、主人公が向き合う過酷な現実の中に小さな幸せが灯るラストに涙を誘われた。ずっとフローレンスを"彼女"と呼んでいたナレーションの謎解き。とても素敵なラストシーン。なのにただ悔しくて。それだけ僕はこの物語に引き込まれていたということだろう。

本屋に行くのが好きだ。表紙を眺めるだけでも、知的好奇心を高めてくれたり、今の自分を戒めてくれたり。センスのいい気の利いた異性と本屋でデートできたら最高だ、と昔から思ってきた。本との出会いは人と人をつなぐことでもある。ブランデッシュ翁の心を開いたのもまさに本の魅力であり、それをチョィスするフローレンスの心遣いあってのもの。本屋のなかったあの町にフローレンスの書店は、活字文化の発信地となった。それだけに、センセーショナルなナボコフの「ロリータ」を店に置くことをフローレンスが迷ったのも納得できる。

ブランデッシュ翁に薦めたのがレイ・ブラッドベリというのがまた素敵。ブラッドベリの「華氏451」は、思想統制の下で書物が焼却される未来社会の物語。過酷な状況の中で、物語や知識が受け継がれていく人々が出てくるクライマックスには感動した。そして、トリュフォー 監督による映画化でヒロインを演じたのが、この「マイ・ブックショップ」でナレーションを担当したジュリー・クリスティーなんだもの。フローレンスのスピリットが受け継がれる「マイ・ブックショップ」のラストは、「華氏451」の継承であり偉大な作家たちへのリスペクト。

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物語
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