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HELLO WORLD (2019)

監督
伊藤智彦
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3.53 / 評価:1,152件

都言葉による吹き替え版を熱望(長文注意)

  • whrmds さん
  • 2020年1月1日 3時02分
  • 閲覧数 290
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

セカイ系ラノベ風味の公式サイトやポスターの煽り文句に惑わされずに、しっかり見てあげてもらいたいです。チラ見では、いかにも新海誠監督が得意とするような、ボーイ・ミーツ・ガールのセカイ系ラノベっぽい定番ラブストーリーの装いですが。実は作品構造がかなり骨太で、ハヤカワSF文庫の青背表紙本にオマージュを捧げつつ、世界観の基本は映画『インターステラー』で、フィリップ・K・ディック風味の出汁を利かせ、仕上げのスパイスとして映画版『BLAME!』の香りといったところ。あれこれツッコミどころはあるにせよ、筋が通らないところがあまりないので、コアなSFファン・アニメファンにも楽しめると思います。昨今ヒットしたアニメ映画で目につくようになった「監督のご都合主義」というか、オルタナ・ファクトというか。そういうリアリティを欠いていて、現実からも乖離した、「考証が演出に屈服した」展開は目につきません。制作サイドが「大嘘をキメるためにリアリティを実直に積み上げた」ところは、映画『シン・ゴジラ』を一つの頂点とする、日本のSF映像作品伝統のお家芸と言えましょう。キャラも十分に魅力的ですよ。
 おそらくこの映画の最大の問題は、美しく正確で端正な背景美術の中で、生き生きと京都の高校生活を描いた作品であるにもかかわらず、都言葉で話すキャラクターが一人もいないことでしょう。生徒たちは、綺麗で品の良い東京の山の手言葉で話します。女子同士が、どこぞの女子高等科のように「ご機嫌よう」と挨拶するのではないかと誤認する水準で。そのあたりは、ヒロインの姓が藤原摂関家の本家筋を暗示する一條ではなくて、ラノベっぽい一行であることにも現れているようです。そこが惜しい。都言葉のガチの考証をやって、主人公男子が洛中では馬鹿にされる伏見か宇治あたりの洛外の言葉で、ヒロインは最高レベルの公家のお嬢様(公爵家!)の言葉で、勘解由小路さんはそれからやや落ちる家格(子爵家!)のお嬢様の言葉で、それぞれが京都ならではの「格差」を背負っているという演出による「京都版」を夢想したりしました。特に勘解由小路さんは、劇中でわかりにくい立ち位置のキャラなので。それなりの京都のお嬢様の言葉で、一歩引いた立場から「本家は山口県ですし、(ヒロインのお宅と比べれば)うちは普通です」というのが口癖で、その度に「オイオイwww」と総ツッコミを受けるというような人物造形だったなら、「こいつはいずれヒロインを陥れる邪悪なキャラに違いない」と警戒しながら見ないで済んだと思います。将来的にテレビ放映時にでも、「都言葉吹き替え版」やってくれないかな。でも、劇中のヒロインの自宅、冷泉家とかの京都のお公家様のお屋敷レベルの邸宅ではないんですよね。そのあたりはどうなんだろ、伏見・宇治あたりに住む人達を「京都に住んでいると言うな」とディスりまくる洛中の住民的には。
 それから、中身の良さに比べてタイトルがその良さを伝えていない不一致というか、ダサいとまでは言わないのですが、ちょっと残念。もしこの映画が予想されたほどヒットしなかったとしたら、マトを外したタイトルの影響は大きいと感じます。例えば、ドラ〇エ映画版でも暴威をふるった山〇貴監督のくどいタイトルばりに、腹にもたれるほどの脂ギッシュさマシマシで、セカイ系ラノベっぽく『君のために僕はこの世界を壊す HELLO WORLD』くらいはやっても良かったのかも。もちろん冗談ですがwww。あの、必ず添えられる英語のサブタイトル、何なんでしょうね。なお、この作品の上映が始まる直前、コッテリな3Dアニメ版ルパンの予告とスッキリな4DX版カリオストロの予告を立て続けに見てしまって、くど過ぎる胃もたれが一瞬で解消するという奇跡を体験しました(笑)。
 最後に、ピンチに陥った主人公が召喚する「一番強力なヤツ」は、とりあえずはデカい本でもいいのですが、やはりそれは『ネクロノミコン』であるべきではなかったか、と。それをぱっと開くと、ページから「這い寄る混沌」ニャルラトテップとか、「千の仔を孕みし森の黒山羊」シュブ=ニグラスとか、クトゥルー神話の邪神がウゾゾゾゾって涌いて出るのだったら良かったと思いませんか。クトゥルーの邪神は人間が組んだプログラムでなんとかできる相手ではないし、本を物理的に振り回すよりも画面に映えるし、本から邪神を召喚という点で主人公の読書好きも生きるし、そんな代物を出したままでは主人公もヒロインの危機に駆けつけられないしで、かなり盛り上がったと思うのですが。そこも惜しまれます。

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