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天気の子 (2019)

WEATHERING WITH YOU

監督
新海誠
  • みたいムービー 2,653
  • みたログ 1.8万

3.69 / 評価:15078件

不条理な世界を変えた純粋な恋。

  • ZERO さん
  • 2019年7月19日 23時09分
  • 閲覧数 13017
  • 役立ち度 571
    • 総合評価
    • ★★★★★

本日私は二度目の鑑賞を終えた。今回で二回目の再評価と最後の総評としたい。
最終的に、本作は「合理性のある映画的恋愛物語」と思って観ると失敗するが、「不条理な世界を受け入れ、乗り越えようとする少年少女達のジュブナイル的恋愛映画」と理解して鑑賞することによって、君の名は。よりも野心溢れる傑作へと大きく評価が変わる「怪作」であると私個人は結論付けた。
本作のテーマは「雨」であるが、この雨は大人になり切れない少年少女達に打ち付ける世の不条理の象徴である。劇中にて、主人公の帆高や陽菜は満足な金も持たず、親の助けも得られないか弱き存在として描かれている。いかがわしい性風俗の宣伝や店舗、ラブホテルの描写も都会に落ちた影の一つだ。陽菜が工夫してポテトチップやチキンラーメンを取り入れた見た目は美味しそうな料理も、冷静に考えてどこの大人が栄養がありそうだなどと思うだろう?
そして彼らを取り囲む大人達や彼らの思惑、常識や社会は雨の降る都会のように陰鬱で冷たいものだ。帆高や陽菜の行動を幼いと一蹴する「我々」の温かな思いやりの無さも吹き荒ぶ雨のようだ。
それに追い打ちをかける様に、竜神と思しき超常的存在が陽菜に与えた晴れの巫女の役割と代償さえもが理不尽で不条理である。初め、私はこの超常現象やその存在の説明の弱さを映画としての形式的な評価における致命的要素だと考えていたが、本作の本質として大人と子供の間にある若者が直面する「全てを図り切れない不条理の一つ」として表現されたのであろうと解釈し直した。言い換えれば、大人でさえ世界の全てを知らないはずで、まして世界に飛びだしたばかりの帆高や陽菜が知る由もない未知の世界の一角として表現するために、新海監督はわざと説明不足にしたのではないか…?ということである。(因みに私はこういう解釈から、世界という大海に漕ぎ出した一隻の船が帆を高く掲げるイメージ、つまり主人公帆高の名前の由来にしたのではないかと考えている。)
本作への視点をそう認識し直した時に、如何に帆高の陽菜に対する恋が無謀かつ誰にも敵わぬほど力のある原動力たるかが理解できる。それを観客に分かり易く表現したのが、本作で唯一帆高や陽菜の保護者的役割を果たした須賀の最終局面での涙だ。彼もまた愛する妻を亡くしており、本質的に帆高と同様な存在であったことが劇中で何度か示唆されている。初めは大人になれと常識で帆高を諭す彼だが、不条理な世界の全てに抗ってでも愛したい人が居るという「当たり前のこと」を思い出すことで涙を流したのだ(と私は解釈した)。
又そういった世界観を土台とした時、帆高は前作の主人公瀧よりも遥かに激情的で野心的だ。暴力や権力に対し、銃を発砲する様はリアリティに欠け、時に滑稽にさえ見えるかもしれないが、裏返せば棘ついた彼の心の具現的かつ渾身の叫びともとれる。まるでブルーハーツの歌のようだ。
帆高は常識や社会を捨て、遥か天空に君臨する竜神にさえも抗い陽菜を地上へ連れ戻す。その時彼は「二度と晴れなくてもいい。晴れよりも陽菜がいい」と世界に宣言し、陽菜も彼を受け入れる。つまり、時に残酷で不条理が吹き荒ぶ雨の世界の中で、共に生きていくことを決意したのだ。これこそが、まさに本作にて言われ続けた、「世界を変えてしまった」ということなのだろう。劇中の雨や天災を「ただの現象」としてしか認識できなかった者達には恐らく本作を肯定的に見ることは出来ない。出来るはずがない。なぜなら雨を帆高や陽菜の苦しみとして視ていないからだ。しかしそれは観る者の落ち度だと私は断言させてもらう。同じように大人になり切れない時代を過ごしたはずの我々が、帆高や陽菜に理解してやれない幼稚さが悪いのだと。
二人の愛はどこまでも堅く、恐らく今後どのような形の不条理が彼らを襲おうとも帆高と陽菜を破滅させることは出来ないだろう。本作で新海監督の最大の武器であった「相手を想う男女間のもどかしい距離感」は損なわれてしまった。が、これまでのどの新海作品よりも純粋かつ力強い、真っ直ぐな恋が描かれたのではないだろうか?そういった意味で、私は本作を君の名は。よりも野心的だと評させてもらった。
本作の鑑賞には大いに困難が伴う。初め、観客はえてして常識的な思考で映画を図ろうとするはずだ。私も最初は映画としての合理性のなさや説明不足、序破急といったテンポの破綻ばかりが鼻につき、頭に来るほどであった。しかし、我々も成長しなければならない。映画を観る者の思想や思考は当然自由であるべきだが、理解や思考・思慮の不足によって駄作と一蹴するのではなく、親が子供を見守るような、そういった温かでいてかつ本質を掴む様な、そういった心眼をもって本作を鑑賞頂きたい。

帆高と陽菜の、天高く舞う竜神よりも気高く、世界を変えるほどの純粋な恋心を括目せよ。

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