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眠る村 (2018)

監督
齊藤潤一
鎌田麗香
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3.76 / 評価:21件

記憶は真実を語らない

  • シャオフー さん
  • 2019年5月27日 1時57分
  • 閲覧数 109
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

2013年に公開された「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」では、
自白の恐ろしさ、司法の不条理に焦点をあてたものと記憶していますが、
今回は、ぶどう酒を運搬・開栓した奥西氏の当日を掘り下げ、村民の
供述の矛盾点を突き、【貼り直された封緘紙】という新たな検証を明らかに
しています。また、村での風習として“性事情が大らか”であったことに
婉曲ながら踏み込んだことは、事件の背景をわかりやすくしたように思います。
村民や関係者へのインタビューは、奥西氏が冤罪であるという前提で観ると
心が冷えるコメントが多くある一方で、一歩引いた視点で話してくれる人も
いたことは、少しだけ報われたような気持ちになりました。

恥ずべきことではありますが、自分が小学生だったときのことを
語ろうと思います。(ちょっと長くなります)

図工の時間に、美術の先生がつくった陶芸の置物の見本が壊される出来事
がありました。犯人捜しが始まり「誰か正直に名乗り出るまでは教室から
出しません!」と、給食の時間を挟んで1時間超の大騒動となりました。
収拾がつかなくなり担任教師がやってきて、クラスでいつも問題を起こして
いる男子生徒を糾弾し、無理やり頭を下げさせて事を収めました。

十数年後の同窓会でこの時のことが話題に上り、件の男子生徒は
「はーい!あれは俺がやりました~」とおどけて笑いを取っていました。

――私は心底驚きました。なぜなら“犯人”は私だったからです。
そして、当時彼は最後まで「おれ知らねえ。やってねーよ!!」
と言い続けていたのを覚えています。

あのときの私は、先生が最初からものすごい剣幕だったので、
怖くて言い出せませんでした。犯人捜しの段階で(私も含め)
作品に近づいていたのを目撃されていた人は疑われましたが、
「見てたけど触ってないよ」という言い訳を信じてもらえたのです。
実をいうと、作品を壊した罪の意識はさほど残りませんでした。
(※壊したつもりはなく、取れちゃったので部品を脇に置いておいた)
ただ、自分が名乗り出なかったことで、長い時間をかけて彼の記憶が
悪い方にすり変えられたことを知ってしまい、心から悔やんでいます。

謝罪させられた男子生徒は日頃からいたずらが多かったことで
真っ先に疑われたことに加え、仲の良い人も少なかったため、
かばう人はいませんでした。映画の中で「奥西氏は地域で孤立していた」
というような村民のコメントがありました。おそらく“犯人”になるには
うってつけの存在だったのだと推測できます。

何が言いたいかというと、真実だけが人の記憶になるわけではないことです。
私自身、子どもの頃の過ちを正直に語っているつもりで、
実は脚色しているかもしれません。名張の事件に別の犯人がいて、例えば
「当然」と思っての凶行だとしたらその人の中では罪になっていないし、
奥西氏が代わりに裁かれることは自然の成り行きだったと思ったでしょう。
そして今ではもう、本当に奥西氏がやったという記憶になっている人も
いるかもしれません。

かつては物的証拠と同等に自白や証言に頼ることが真相解明への筋道
だったのだろうけど、科学的に精細な検証が可能になっている現代では
新しい判断が必要になっているのではないでしょうか。
事件を知らない世代の人たちにも考える機会が生まれるように
東海テレビは今後もこのようなドキュメンタリーを
制作していってもらいたいと思っています。

追記:可能であれば奥西氏の「獄中ノート」について考察してほしいです。

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