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上映中

劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~ (2019)

監督
瑠東東一郎
  • みたいムービー 1,471
  • みたログ 8,072

2.77 / 評価:6,992件

一番大切な“ラブ”が行方不明。

  • mar***** さん
  • 2019年10月25日 14時32分
  • 閲覧数 7054
  • 役立ち度 208
    • 総合評価
    • ★★★★★

昨年のドラマに溢れていた“人を好きになる事の素晴らしさ”が、この映画には見当たらなかった。
作り手側の自己満足でドラマ版の世界観も魅力も吹き飛んだ印象。
ドラマと関係なく単に一本のコメディ映画として捉えてみても非常にチープな出来でとても大人の鑑賞に堪える作品とは思えなかった。

俳優陣の力は流石だったけど、話の骨格がガタガタなので折角の演技も活きず。
あちこち辻褄の合わない粗いシナリオ、アドリブに頼った大雑把な演出、品のないギャグ描写にしょうもない内輪ノリの小ネタやオマージュ。

物語の肝であるはずの主人公カップルの心情の追い方は不自然な程おざなりで、
作り手の撮りたい画ありきで展開される荒唐無稽な筋書きに振り回され、性格すら改悪され、
掲げられたテーマ=夢と家族に対するアンサーも特になく全ての問題が有耶無耶のまま物語は寂しいエンディングへ。

ファンが見たがっているものはあえて見せないと攻めの姿勢を気取るなら、最低限、設定したテーマはきちんと説得力を持って描ききってほしかった。
夢にしても家族にしても結局何が言いたかったのか…
パンフの対談にあったような製作側の意図を今回のシナリオから感じ取るのは厳しい。

まず「夢」。
大手企業に正規雇用で勤めていればそれだけで恵まれてると言える今のご時世で、どこを取っても不自然なプロジェクトに人が変わったように打ち込んでいたり(牧)、実家の居酒屋で漠然とした夢を語ったりするだけ(ちず)のキャラにどう感情移入しろと? それでキラキラした気持ちを思い出せと言われても。
宣伝で牧につけられたキャッチコピーからして唐突で違和感があったけど、
映画全体の、いくつになっても夢を持って仕事しよう!と啓発するような流れは、過労で倒れてしまう牧の描写と相まってあまりに時代錯誤で気分が悪かった。
あと仕事に夢を見出だせと言うのなら、春田にしろ牧にしろ働きぶりをもっとリアリティをもって描いてほしかった。肝心の仕事の描写が貧相かつ陳腐。

それに「家族」。
結婚に至る・家族になる過程をリアルに丁寧に、といった話を製作側インタビューで読んだ記憶があるけどどこにそんな描写が?
春田のキャッチコピーは「どうして好きだけじゃダメなんだろう?」だったのに、結局、命の危機に瀕して兎に角牧が好きだと再確認しただけで終了。
結婚して生活を共にするなら好きってだけでは上手くいかない部分もある。それで散々ギスギスしたはずなのに、いざ別れを撤回した後、二人が関係と暮らしを再構築する過程は一切描写されずどんな進歩や変化があったのか分からずじまい。
しかも牧の父には反対されたまま、春田の母には交際すら打ち明けないまま(唯一の肉親なのに!)
その辺りは全てご想像にお任せします、というのは乱暴すぎでは。

今の日本では入籍出来ない事や子供を持てない事など現実的な問題にも、春田の台詞で一瞬雑に触れただけ。
そこへ至る伏線も積み重ねも全く無い状態で炎の中で唐突に言及するのが解せなかったし(しかも子供に関するくだり、あの言い方は牧の心情を思えばあまりに不用意では)、それに対する彼らなりの答えも特にナシ。

そもそも前半で二人が直面していたのは多忙による生活上のすれ違いとコミュニケーション不足からくる精神的すれ違いという、異性カップルでも起こり得る様な問題だったはずで、春田のあの台詞が入る事によって急に論点が“同性カップル特有の壁”へとすり変わるので、そのブレが気になって、見せ場であろうはずのその後の一連の流れにも惹き込まれない。


そうして二人の間に横たわっていた全ての問題を好きだから一緒にいたいという春田の熱意で有耶無耶にした挙句、牧の海外赴任で状況は振り出しに。
左手薬指にひっそり指輪をしているだけで“ホラもう大丈夫”(by公式ツイッター)とは??

挙式の有無に関しては確かに最重要事項ではなかった。
でも果たしてジャスの絵に描いたような結婚式をあえて見せる必要があったのか、春田にすげー子供好きなどと言わせておいてジャスに大家族宣言をさせる必要があったのか。
春田と牧の結婚式と思わせて実は~!と派手にファンを釣りたかっただけなのだろうけど、異性カップルは華やかに祝福されめでたしめでたし、一方同性カップルは幸せに暮らす描写も一切なく遠距離別居生活へ…という徹底した対比ぶりには何か悪意でもあるのかと思ってしまう。
(牧の赴任先がよりによってシンガポールというのも疑問。何故あえて同性愛者を明確に差別する法律が残る国を選ぶ必要が?)

ラストシーンの、まるでこの先何年も会うつもりがなさそうに聞こえる二人のやり取りも不自然で悲しい。

ドラマの続き・完結編と謳った以上は、一度世に送り出したあの2018年の世界観に対して責任を持って作ってほしかった。
もっと素直に春田と牧に向き合い完結させてほしかった。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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  • 悲しい
  • 絶望的
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