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ピア まちをつなぐもの
2019年4月26日公開

ピア まちをつなぐもの

992019年4月26日公開

Dr.Hawk

3.0

ネタバレ生前の笑顔の多さは、臨終の安らぎに繋がる

2019.5.29 イオンシネマ高の原 2019年の日本映画 父の病気によって大学病院を辞めた若手医師が在宅医療に関わる中で、原点へと立ち返るヒューマンドラマ 原案は山国秀幸 監督は綾部真弥 脚本は藤村麿実也&山国秀幸 物語は主人公・高橋雅人(細田善彦)が大学病院を辞め、父・圭蔵(升毅)の医院医院を継ぐところから紡がれる 父は兼ねてから往診(在宅医療)をしており、雅人にもそれを頼み込む 雅人は嫌々ながらも引き受け、地域のケアマネージャー佐藤夏海(松本若菜)を紹介された 物語は「在宅医療に関して無知な医師がその存在を知る中で原点回帰を果たす」ものであり、科学的なデータや理論的に考える医師が患者との距離を取っている様が描かれている そして感情的すぎるケアマネ夏海との関わり、往診患者とのふれあいの中で「在宅医療に必要な心構え」を学んでいくことになるのである 医師と患者のコミュニケーションは難しく、それは病気に対する考え方が違うからである 病気との付き合い方は「治癒(戦い」と「緩和(受容)」の段階があり、圧倒的に前者が主軸である だが現代医療では寛解(治癒)に至らない病気も多く、また生活習慣病はコントロールする方向で病気と関わることになる 本作では「再発転移癌による緩和ケア」を描いていて、「治癒することが医師の務め」だと思い込んでいる雅人が自分の無力感と向き合う中で「患者から感謝される医師」という原点へと戻る様子が描かれている 医師(研究者)にはそれぞれ役割があり、またそれぞれの動機も様々である 雅人は「父のようなみんなにありがとうと言われるお医者さんになりたい」という動機があり、医師への道を進む中で「研究者としての欲求」に囚われていく だがそれは間違いではなく、最先端医療の知識は時として「終末期医療」の手助けになることもあるはずである また逆に「終末期医療」の患者の望みを叶えることで進む技術もある、いうことである 医療は表裏一体、患者と接する中で「無駄な瞬間」などひとつもないはずだと考えている この映画を観た率直な感想は「教則本的」であった それはこの映画の作られた目的に依ると思われるのだが、とにかく「ピア(仲間という意味)」に関わる人数が多すぎて、それをすべて説明せざるを得ないところが映画的ではなかった 一応、他職種連携会議後の親睦会であるものの、そこで為される「自己紹介」がちょっと不自然に感じた この映画の主たる役割は「在宅医療の現実の認知」であり、それは「観客に向けて行われる」のであるが、実際の経験者である私にとってはむず痒さを感じた またこの映画において、その認知を果たすために「知識のない医者」と「未成年の患者家族」を配置している 観客目線で在宅医療を知るためには後者にあたる末期癌患者の由紀子(水野真紀)の娘・波瑠(川床明日香)あるいは夫・孝二(竹井亮介)に視点をフォーカスさせなければならなかったのではないだろうか いずれにせよ、映画の取り組み自体は好意的であり、もっと認知させるべきであると思う だが現代の情報化社会において、生きることに必死な家族や本人は医師以上に「自分に関わることを勉強する」ものである 実際のところ、私の妻が在宅医療を行った際はほとんど自分で制度を調べ上げて「妻の望むこと(最期は家で死にたい)」に向けて主治医と喧嘩をしたこともあった 医師として「死に急ぐ行為」にも見える在宅医療は選択肢にあっても中々難しいものかも知れない 患者本人にとって「医師と家族のどちかが悪役を演じるか」という現在の状況を打破することこそが、この問題の最大の課題ではないだろうか ちなみに「ピア」の語源が後半のシークエンスで語られるのだが、正直なところ「このタイミングで説明するか?」と疑問に思った なぜなら「ピア」というチームが機能することが「日常的であること」が物語の骨子である このように「言葉をミステリーにして特別視する」ことは理想とは真逆の演出をしていることになる 前半のシークエンスで雅人を無知な医師としていて、彼に学ばせるという流れを採択するのであれば「前半の会話の中で普通に使うべき」である 「ピアってなんですか?」という疑問を雅人に持たせ、「それぐらい自分で調べてください」と夏海に言わせる その中で現場の彼らを見て雅人がその意味を理解し、そして「ピアの一員となった雅人」が波瑠の疑問に答えることで、「ピア」という言葉の認知がなされる この方が理想にもシナリオにも即した形で「存在認知」に役立つのではないだろうか? 目的意識の高さは認めるものの、その表現に際してはまだまだ発展途上に感じたので、感動できる良い映画ではあるものの少々辛口のレビューをさせていただいた

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