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町田くんの世界 (2018)

監督
石井裕也
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3.26 / 評価:761件

解説

『舟を編む』などの石井裕也監督が、第20回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した安藤ゆきの漫画を映画化した青春ストーリー。優しい男の子の日常が覆る出来事が描かれる。主演は、1,000人を超える応募者の中からオーディションで選ばれた細田佳央太と関水渚。岩田剛典、高畑充希、前田敦子、太賀、池松壮亮、戸田恵梨香、佐藤浩市、北村有起哉、松嶋菜々子といった俳優たちが共演している。また全編を35ミリフィルムで撮影した。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

町田くん(細田佳央太)は運動や勉強が不得意で見た目も目立たないが、困っている人を見過ごすことのできない優しい性格で、接する人たちの世界を変える不思議な力の持ち主だった。ある日、町田くんの世界が一変してしまう出来事が起こる。

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映画レポート

(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019 映画「町田くんの世界」製作委員会
(C)安藤ゆき/集英社 (C)2019 映画「町田くんの世界」製作委員会

「町田くんの世界」「善なること」に意味はあるのか?コミカルな味わいのなかに現れる大きなテーマ

 いいね、町田くん! 思わず、その名前を口に出したくなる映画だ。石井裕也監督の新作は、ほとばしる汗と涙と、意外性とみずみずしさに満ちていた。

 高校生の町田くん(細田佳央太)は心優しきメガネ男子。勉強はできず、運動もダメ。全力で走っても「めっさ遅っ!」な町田くんだけど、彼には「困っている人を見過ごせない」という究極に善なる心があった。そんな町田くんが孤独な同級生・猪原さん(関水渚)に出会い、ある感情に目覚めていく――。

 まるで自主映画に戻ったかのような、決めすぎないラフな味わい。新人2人を主役に抜擢し、岩田剛典、高畑充希、太賀――主役級の豪華キャストで脇をかためる。しかもみんな制服姿で高校生をしてる(十分、似会うけれど。笑)。なかでもクラスメイト役の前田敦子の存在感は抜群だ。冷めた目線と口調で突っ込みを入れつつ、町田くんの存在に輪郭を与えている。

 と、いろいろ型破りな手法で、石井監督は現代の寓話を世に投げてきた。

 そう、本作はコミカルな味わいのなかに、現代に問う大きなテーマがある。この悪意に満ちた世界で「善なるもの」は存在するのか。「善なること」に意味はあるのか。こうした人物像は繰り返し描かれてきた。たとえば沖田修一監督の「横道世之介」。そして今年のベスト入り確実な、イタリアの珠玉作「幸福なラザロ」。醜いこの世界を小さき力ながら無欲に無自覚に浄化せんとする彼らには、往々にして「自己犠牲」という結果が待つ。果たして町田くんはどうか。これまた意外な展開が待っている。

 汚れちまったこんな世界にも、駅の階段で他人のベビーカーをサッと担いで登るサラリーマンがいる。財布を無くして絶望する高校生に、名乗らずに飛行機代を渡す人もいる。そして善なる心に触れた人は、確実にそれを次へと繋ぐ。現実も物語も、世界はまだまだ捨てたものじゃない。(中村千晶)

映画.com(外部リンク)

2019年5月30日 更新

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