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上映中

真実 (2019)

LA VERITE/THE TRUTH

監督
是枝裕和
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3.44 / 評価:492件

描かれたのは母娘の葛藤だけではなかった

あの是枝監督の最新作であり、ヴェネチア国際映画祭オープニング作品となったこともあって、様々なメディアであらすじが紹介されていました。このヤフーのあらすじでも、「自伝は、隠されていた母と娘の愛憎渦巻く真実を明らかにする。」とあります。勿論それもあるのですが、ただそれだけのものではありませんでした。
 映画の冒頭、林?森林?のショットから始まります。これが既に、日本映画のものではなく、ハリウッド映画でもない、欧風映画の色彩でした。後にこれが、ドヌーブ演じる大女優の家の庭だということがわかります。
 この大女優は、誰もが認める大女優なのですが、自らの老いということも意識しています。若くて美しく、才能ある女優さんも次々と登場してくると、そりゃ内心穏やかではないでしょう。女優というのは男優と違って、その葛藤があるでしょうね。樹木希林や古くは北林谷栄のように若い頃から老け役をやっていればその悩みはないかもしれません。そうでないならば、これまた古いですけど原節子のように若くして引退するしかないのかもしれません。
 そんな大女優が自伝を上梓したということで、その内容が気になる娘夫婦が子供を連れてやってきます。他にも、別れた夫がやってくるは、長年世話を焼いてきた秘書は、自分のことが書いてないと拗ねて辞めちゃうは、で騒動が起きるわけです。
 その一方、「あらすじ」には一切触れられていない劇中映画の撮影が行われます。これが摩訶不思議なSF作品で、不治の病で地球に住むことが出来なくなった母親と娘が7年ごとに会うというストーリーでした。そしてこの母親は、どうも不老不死になっているようです。つまり母親はいつまでも若く美しいまま。娘の方は、会う度に老けていくわけですね。その娘の晩年を演じるのがドヌーブ演じる大女優であり、歳を全くとらない母親役は新進気鋭の女優役という設定でした。ドヌーブ演じる大女優は、自分が老け役を演じることに不満を抱いているというわけです。劇中映画の物語上でも、老けていく娘は自分の境遇に不満をもっているみたいでした。見ているこちら側から言えば、それならば、何故自分も地球に住むことをやめなかったのか?と考えてしまいます。ヒトは老けていくことこそ、真実の姿であると言い表しているのでしょうか。おそらくこの状況だと、辛いのは母親の方ですよね。
 ジュリエット・ビノシュ演じるドヌーブの娘が、自伝の記述が真実と異なっていると思い込んでいたことは、実は自分の記憶が曖昧だったことに起因することも沢山あったこともわかり、また長年勤めた秘書が辞めたと宣言したのも、実は本心ではなかった、なんてことも判ります。タイトルの意味は、ラスト近く孫娘がつぶやくことに集約されている気がしますが、歴史上の事象ならばいざ知らず、ヒトの思い、記憶などに基づいて、こんなことがあったと思い込んでいることは、それぞれの感性、受け止め方に変わってくるのかな?というところでしょうか。おそらくこれは、見る人によって解釈が異なる作品かとは思います。
 その一方、劇中映画でも、本編の映画でも、最後はわかり合うという結末は、やはり家族というものは、切ろうとしても切れない絆みたいなものがあるのだなと思いました。
 会話する言語も、画面から滲み出る雰囲気も、とても日本人が監督したとは思えませんが、ラスト近く折り鶴が沢山出てくるシーンがありました。折り鶴は日本文化の象徴の一つです。監督は言葉も通じない環境や世界的大女優が相手で苦労されたと思いますが、まぎれもなく是枝監督の映画となっていました。ただ、物語の展開は、さほどドラマチックなシーンもなく、淡々と進みますので、娯楽作品と思って見に行くと肩透かしをくらうかもしれません。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 切ない
  • コミカル
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