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おいしい家族 (2019)

監督
ふくだももこ
  • みたいムービー 69
  • みたログ 101

2.95 / 評価:79件

想いと行動が一致しておらず理解不能な結末

  • dr.hawk さん
  • 2019年9月28日 23時21分
  • 閲覧数 613
  • 役立ち度 5
    • 総合評価
    • ★★★★★

2019.9.26 テアトル梅田


2019年の日本映画
「若手映画作家育成プロジェクト2015」に選出された短編映画『父の結婚』を基に作られたヒューマンドラマ
帰郷した娘が父の再婚を知らされ、変わってしまった家族の中で翻弄されるヒューマンコメディ
監督&脚本はふくだももこ


物語は銀座のコスメショップにて接客をしている主人公・橙花(松本穂香)が描かれて始まる

仕事は順調とは言えず、結婚して3年になる夫とは別居生活をしている状態

結婚記念日に久しぶりに食事をしたふたりだったが、関係が修復されることはなかった

夫婦関係が破綻していることを誰にも言えないまま、母の三回忌で故郷の島へと帰ることになった橙花

変わらない実家の匂いを懐かしみ、仏壇に手を合わせていると、懐かしい父・青治(板尾創路)の声がした

声に振り返った橙花は言葉を失う

それは父が母の服を着ていたからである

父の奇行(橙花目線)対して弟・翠(笠松将)も彼の妻サムザナ(イシャーニ)も普通に受け入れていて、橙花には何が起きているのか理解できなかった

混乱したまま迎えた夕食の席で、橙花は再びカオスの海に沈められる

それは突然見知らぬふたりが入ってきて、まるで家族のように食卓を囲んだからである

彼らは父の再婚相手である「男性」の藤田和生(浜野謙太)とその娘ダリア(モトーラ世理奈)だと言う

そして父は「父さん、母さんになろうと思うんだ」と、橙花の精神を完全に崩壊させる一言を放つのであった


物語は再会した父が三回忌を機に再婚を考えていて、その相手が同性かつ連れ子がいるという理解不能な展開になって動き出す

彼らは福島から被災してこの島にたどり着いた親子で、実の親子かどうかもわからない

教会の二階で寝泊まりしていたふたりを父は自宅に招き入れ世話をする

そこから奇妙な家族関係が始まったというのである


映画は国際結婚(弟夫婦)、LGBTQ(父と和生)の関係を描いているものの、それらに対する深い言及があるわけではない

むしろ主題となる「多様性」のための道具的な存在であり、必然性はほとんど感じられない


父の欲求である「母さんになりたい」は「子どもの親になりたい」とか「妻になりたい」ではなく、あくまでも「早逝した妻に近づきたい(同化したい)」というものである

ゆえに彼が母の格好をして、和生と結婚しても目的が果たされたかどうかは微妙と言わざるを得ない


父には同性愛の気配はない

ゆえに関係は「同居する他人」の域を超えず、物語上でも結婚は形式で「養子」として迎えるとある

なのでラストシークエンスの結婚式の映像は理解不能で、劇中では「島だから」という閉鎖的な場所では同性婚は受け入れられないという認識があったはずで、物語内での価値観の一貫性もない

母の格好をしている校長を受け入れている島民というのも理解し難く、真っ先にPTA案件になる「事案」と言えよう

設定に無理があり、状況が理解不能なので、この映画を好意的に受け入れる要素が皆無に近いのである


LGBTQや国際結婚などに偏見はなく、多様性の否定もしないが、この描き方では「映画のパーツでしかない」ので逆に配慮が行き届いていないようにも感じる

家庭を持ちたいという和生とダリアの想いは理解できても、和生が同性愛者でなければ父と結婚する意味はない

むしろ島民の誰かと家庭を持つことの方が重要で、このふたりが結婚にまで至る理由が映画の中では描かれていないのである


また「父が母になりたい」という理由は理解できるし、母と同化したいという想いまではわかる

それを否定しない家族愛とかそう言ったものとの軋轢の方が本来起こるべき事柄であり、それが蔑ろにされている時点で「この映画には一般常識の範疇である人間は存在しない」ようにしか思えないのである



いずれにせよ、物語で描かれるミステリーを描き切れたとは言えず、また独特な世界観に対して共感性を呼ぶというパラダイムシフトも存在しない

この映画に共感できないことが多様性の否定ですかと言われても気にもしないが、表現においてパーツ扱いすることの方がよっぽど失礼ではないかと感じる

今の時代ではまだ「家族の受容>世間の受容」のままなので、そのハードルがないような世界観はファンタジー以外の何物でもないだろう

アイデアとしては面白いかも知れないが、こう言った問題に対する思慮の浅さが滲み出ているように感じるのは私だけだろうか?

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 絶望的
  • コミカル
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