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長いお別れ
2019年5月31日公開

長いお別れ

1272019年5月31日公開

たーちゃん

3.0

ネタバレこの頃ね、いろんなことが遠いんだよ

この作品いいところと悪いところが極端に出ている作品だと思います。 最初の数シーンで登場人物の関係性やキャラクターが上手く良く表現出来ていました。ただそこは俳優たちの名演でカバーされているところが多かったと思われます。 まずは圧倒的の山崎努氏の存在感。あの「天国と地獄」のギラギラとした俳優もこんな役をやるようになったんだと感じました。ただそんな山崎さんだからこそ、この「老い」や「ボケ」というのが怖いものとしてとらえられます。 最近読んだ面白い本を貸すというシーン。いきなり怒りだしたり、面白い本が「国語辞典」だったりとか。山崎氏演じる昇平は元教師で校長までやった過去があります。本の虫で漢字だけはとても良く知っている設定です。孫からは漢字マスターと呼ばれて尊敬されたりもします。ですが老いが進んでくると「紅葉」さえ書けなくなってきます。 どこにだか「帰る」と言ってどこかに行ってしまう放浪が始まったり、記憶がおかしくなって誰が誰だかわからなくなっていきます。 立派だった人ほど過去の栄光があるだけにボケてしまったあとの風貌がなんだかみじめで可哀そうに感じてしまいます。そんな昇平というキャラクターを見事に演じていました。 またそんな父昇平を囲む家族の妻曜子の松原智恵子さん、長女麻里の竹内結子さん、次女の芙美の蒼井優さんたちの名演がそこにリアリティを持たせていました。 曜子はそんな昇平をボケてしまったといっても見捨てる事なく、本当に昇平を愛しているんだなと思える妻を演じていました。可愛い奥さんです。 長女の麻里は夫の転勤で海外に住んでいますが、父の事を心配している娘を演じていました。父の田舎に行って母とスイカを食べるシーンで「上を向いて歩こう」を歌うところなどとても自然でいいシーンでした。 「この頃ね、いろんなことが遠いんだよ」昇平が孫に話します。 ボケと普通の記憶が入り混じるところがリアルでした。 帰りの電車の中でボケた昇平が自分の両親に曜子を紹介したいと告白するシーンがあります。「一緒に来てくれますね」「はい」いいシーンです。 昔の松原さんはアイドルのような方でいまだに可愛い方ですが、手のアップになった時のしわは年齢を感じさせました。 不自然なのは麻里の家族の事や芙美の生活の事などが変なところが多々あります。 麻里がワゴンカーのカレーを父に試食させようと準備していたところに行列が出来るのはかなり無理があると思います。 磐田道彦(中村倫也)との関係や道彦と前妻や娘との関係がパターンで、それに気が着き身を引く芙美は不自然だと思いました。 ただその再会の現場に出かけて前妻や娘、そして勤務先のママが一緒にいた時を見る芙美の無念さはカバンを持つ手の表情で表現していました。 その無念さをボケた父にだから告白するシーンはいいシーンです。 「私がいくら頑張ったって家族には勝てないもん」「そんな時はなギューッとするんだ」父からのアドバイスは良く分かりませんでしたが、良いシーンです。 GPS機能で父の動向を監視したり、遊園地を母と娘で探索する3人のシーンは良いシーンです。 遊園地で昇平がメリーゴーランドに乗るところは父が昔迎えに来てくれたことを思いだす3人です。昇平を誘った子に昔の娘を見たのではないでしょうか。 曜子が入院してしまい芙美が父の介護をするシーン。 父がうん〇をもらしてしまい、ズボンを下げて処理をするシーン。うん〇まみれのお尻が露出されますが、衝撃です。 介護というのは大変です。実の親だとしても赤ちゃん帰りしてしまう親の介護は子どもにとっても大変なものとなっていきます。 自分と置き換えても自分の両親も健在で、今は元気ですが将来はどうなるかわかりません。それに自分自身の事を考えた時に、独身の私なんかはどんな事になるのだろうとゾッとする思いでいます。 ラストで孫の学校での先生とのやりとりで終わりますが、なぜ孫なのでしょう。 この孫がなぜ不登校になったのか、良く背景もわからないのと、小学生時代は交流があったとしても大きくなってからは一回母のインターネット回線で顔を合わせた程度の交流でした。 そこで祖父が亡くなった程度の会話はありましたが、そこにあまり太いものがあったようには感じませんでした。 この映画は山﨑務、松原智恵子、竹内結子、蒼井優の4人がいなければ成立していない作品だと思いました。 欲を言えばシャキッとしていた校長先生時代や娘たちが父親に反発しながらも自分の道を歩もうとしている頃の映像が見たかったです。その方がより「ボケた」時の衝撃が伝わると思いました

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