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魂のゆくえ
2019年4月12日公開

魂のゆくえ

FIRST REFORMED

1132019年4月12日公開

つとみ

4.0

ネタバレ牧師版タクシードライバー、か?

息子を亡くし離婚し、酒浸りで、病魔にも犯され、すでにかなり追い込まれているトラー牧師だが、そこから更に追い込まれるというのが作品内で描かれる内容だ。 見方によってはなるようにしかならないし悩むようなことでもないとも考えられるのだが、熱心な牧師であるトラーは悩んだ。 中盤に出てくる若者たちとのディスカッションの場面で、若者は極端で妥協点を見つけられないという話があるが、トラー牧師は正にそんな極端さに落ちていくのだ。 冒頭、トラー牧師は日記をつけ始める。この行為は悩めるトラーによる神との対話だったのではないかと思う。 自分と向き合い状況を整理し神に救いを求めた。 しかし皮肉なことにそれは更にトラー牧師を追い詰めてしまうことになる。 なるようにしかならない妥協点を見つける行為とかけ離れた、より極端に走るしか道がない行為だった。 アスペクト比がいじられている作品は良作が多いと自分は思っている。本作も良質な一本だったわけだが、画面サイズが小さいことで生まれる効果や意味は作品ごとにことなる。 わざわざアスペクト比をいじるのだから作り手には何らかの意図があるわけで、出来ればそれを紐解きたいと考えてしまう。 まず、オープニングのクレジットの雰囲気と画面サイズで50年代か60年代の作品かのように作っていると想像できる。または70年代か。実際は現代が舞台であっても50年代の作品と思って観ても変わらないのではないかと、現代まで続く全く解消されていない変化のなさを指摘しているように思えた。 監督で脚本のポール・シュレイダーが50年前から考えていた脚本らしいので、ただ単に着想の時期を匂わせたかっただけで、現代に置き換えても成立してしまったのは偶然かもしれないが。 そしてもう一つ、画面サイズが小さいことで覗き窓のような効果があったと思う。 もちろん覗いている筆頭は私たち観ている者ということになるが、神がトラー牧師を見ているとも考えられる。 日記による神との対話は、結局は自分の中にある神との対話であって、実際の神は(不信心の自分が「実際の神」と言うのはおかしいが)窓の外から見ているだけなのだ。 「タクシードライバー」は本作と同じポール・シュレイダーの脚本だ。 ベトナム帰還兵と牧師では悩める根本が違うだろうが、追い詰められた男が極端に走るという意味では同じだ。 終盤になるにつれ「タクシードライバー」よりも悲劇的で悲惨なエンディングしか残されていないのではないかと考えてしまった。 しかしラスト5分くらいで二転三転することになる。 最初は、協会に入ってきたメアリーの姿を見て爆破行為を思い止まる。有刺鉄線で自分を戒め、命を絶とうとするのが次。 そしてエンディング、トラー牧師は息絶え最期に幻覚を見たというのが正しい解釈だと思う。 しかし自分のように頭空っぽで観ていると、トラー牧師を救ったのは窓の外から見ているだけの神などではなく、もっと身近にある人で、愛だったのかなとポジティブに捉えたくなるのだ。

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