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ワイルドライフ (2018)

WILDLIFE

監督
ポール・ダノ
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3.47 / 評価:96件

本能的な部分を理解し合えなくても

  • dr.hawk さん
  • 2019年7月26日 19時03分
  • 閲覧数 459
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

2019.7.25 字幕 シネリーブル梅田


2018年のアメリカ映画
原作はリチャード・フォード著作の小説『Wildlife』
モンタナに引っ越してきたある家族の崩壊を、14歳の息子の視点で描くヒューマンドラマ
監督はポール・ダノ
脚本はポール・ダノ&ゾーイ・カザン


物語の舞台は1960年代のアメリカ・モンタナ州
そこに引っ越してきたブリンソン一家の日常が描かれて始まる

夫ジェリー(ジェイク・ギレンホール)は町のゴルフ場でコーチをする傍ら、コース整備をして生計を立てていた

妻ジャネット(キャリー・マリガン)は専業主婦で良妻賢母

ふたりの間には14歳の息子ジョー(エド・オクセンボールド)がいて、彼は時折父の仕事を手伝っていた


ある日、ジェリーが客と賭けゴルフをしていることが職場にバレてしまい、それが理由で一方的に解雇されてしまう

「家計の足しにするために」とジャネットは外で働くことを決意し、ジョーもまたアルバイトをすると言い出す

なかなか仕事が決まらないジェリーは苛立ちながら、徐々に飲酒量が増えていった


物語はプライドが先立って、ゴルフ場からの不当解雇による再雇用の申し出を断るところから動き出す

レジ係でもいいから何か仕事をしてほしいと願うジャネットを突き放して、ジェリーは何の前触れもなく、山火事消火の仕事をすると言い出す

山火事の仕事は初雪が降るまで、と妻を宥めるものの、長期間家を留守にし、命の危険もある仕事

さらに1時間1ドルという薄給に、ジャネットもジョーも父がどうしてその仕事を選んだのか理解できずにいた


ジャネットはYMCAにて水泳を教え、ジョーは写真館の撮影補助として働く

そんな中、ジャネットは生徒であるウォーレン・ミラー(ビル・キャンプ)との距離を縮めていく

彼は町の車販売店のオーナーで、妻は出ていったと言う

その頃からジャネットにある想いが芽生え、容姿が少しずつ派手になっていくのである


タイトルにある『Wildlife』は直訳すると「野生動物」という意味になるが、「Wild」はスラングで「Crazy」に近い意味を持つ

劇中でこの言葉は一度だけ登場する
それは「ジャネットの不倫が発覚したときの夫婦喧嘩」のシーンにおける「ジェリーが妻に放つセリフ」であった

字幕では「理解できない」と訳されていたその台詞

物語全体がジョー視点で描かれていることを考えると、それはそのまま「ジョーから観た夫婦」とも言え、「それを言いたいのはこっちだよ」という内なる声のようにも感じた


家庭が崩壊していく様を間近で見ながら、でも何もできずにいるジョー

ウォーレンとの関係を母に咎めても、「ほかに道があったら教えて」と言われるだけ

無力な14歳は誰にも相談することもできずに、ただただすれ違う夫婦を眺め、変わっていく母を目の当たりにするしかなかったのである


ジェリーが山火事に魅入られたのは、職探しのときに聞いた「山火事の功罪」が起因であり、またウォーレンがジョーに話した「雁の群れと遭遇したときのエピソード」によって補完される

「あの瞬間はすべてを忘れ、神と一体となった」

人間嫌いのジェリーが救いを求めた先、それは自然への畏怖とともに「命を忘れる」瞬間だったのかも知れない

ジェリーは帰宅後に山火事のエピソードを話す際に「おかしくなって火に飛び込む人がいた」とジョーに語る

人間的な理性を忘れてしまう中で、生き残った自負

それこそがジェリーが求めていたものであり、彼にとっての「Wildlife」とはそのような意味合いなのではないだろうか


そんな感覚を理解できずにいるジャネットは、ジョーを山火事の現場へと連れて行く

森が焼かれる轟音と皮膚を焦がすような熱量

彼女が見せたかったのは「自身の不安度の大きさ」であり、その炎は「ジェリーに対する怒り」のようにも思えた

だがあの瞬間にジョーはジャネットの意思を汲んではいないだろう

何故なら、彼はその瞬間に「神と一体となる」というウォーレンの言葉の意味と、父がそこに向かった理由が何となく理解できたからである
(これは男の人なら理解できる感覚なのかも知れません)


いずれにせよ、「Crazy」な言動の末に崩壊する家族の中にいて、常識的かつ無垢な目線でふたりを見るジョーは、家庭や人間の難しさを学んでいく

「親としての愛情」は夫婦破綻後にも生きていて、その瞬間をカメラに収められたことは幸運で、3人でいることはジョーにとっての「良きこと」であった

心理的距離によって破綻したふたりは、物理的距離を取ることによって、その時間経過とともに許しへと向かう

ブリンソン家に訪れた山火事は沈静化し、今は穏やかな春を迎えているよう

ポスターにも使われている「距離を開けたふたり」が見つめ合う中で交わす笑顔はとても印象的だった

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 絶望的
  • 切ない
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