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生理ちゃん (2019)

監督
品田俊介
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3.27 / 評価:98件

二階堂ふみ、伊藤沙莉ダブル主演のコメディ

今回取り上げるのは、昨年11月公開の『生理ちゃん』。上映時間は1時間15分と短いが、普遍的なメッセージがスッと胸に入ってくる、好感の持てるコメディ映画であった。物語の主人公は女性ファッション雑誌の編集者・青子(二階堂ふみ)と、青子の働くオフィスで掃除のアルバイトをするりほ(伊藤沙莉)の二人で、二階堂と伊藤が同じ画面に写る場面は2回ある。
きわどいタイトルだが、監督もマンガの原作者も男性なのが意外である。『生理ちゃん』はピンクのハート形をしたゆるキャラで、小さな目に大きな赤い唇・鼻の部分に絆創膏を十字に貼った姿は「がんばれロボコン」の看護婦ロボット・ロボペチャを連想した。ロボペチャは右手が巨大な注射器になっているが、生理ちゃんも注射器を持つ場面があり、なおさらそう思った。

生理ちゃんは複数体登場し、生理による体調不良が酷い人には巨大な姿で、軽い人にはポーチに入るくらいの小ささで登場する。青子は前者に属し、生理ちゃんを背負いつつ坂を辛そうに上がるシーンが映画を代表するビジュアルになっている。画面上で血が見えるシーンは全くないが、ピンクに染まった満月が「女性に生理が来た」ことを象徴的に表している。
青子が会社の先輩とトイレで会話するシーンで、「生理を仕事ができない言い訳にしたくない」と言われるが、その先輩の生理は軽い。同性であっても辛さを分かち合うことの難しさを実感するが、元凶である生理ちゃんは厄介な来訪者であると同時に旧友のような存在でもある。夜景の中で生理ちゃんと並んで腰を下ろしているシーンは妙な哀愁を感じさせる。

ゆるキャラは生理ちゃんだけでなく、男に対して現れる「性欲くん」と「童貞くん」がいる。オバQを縦に長くしたような姿で、エッチなキーワードをボソボソと呟く性欲くんの登場がいちばんの笑いのポイントだ。ただし性欲くんは生理痛や体調不良を起こすわけではなく、男性特有のものでもないから、生理ちゃんの男性バージョンとするのは無理がある。
童貞くんはパッチリ目で、アンパンマンとスポンジ・ボブを合わせたような姿で、生理ちゃんや性欲くんよりも小さい。未経験の男のもとに現れるのは分かるが、思春期を迎えた男全員に来るのか、20歳以上の男の所に来るのか、あるいは女性に片思いしている男のもとに来るのか?特に何をするわけでもなく、こいつの存在意義には疑問を感じる。

ゆるキャラと言っていいのか分からないが、見逃せないのがりほのSNSアカウント「煮え湯飲み子」で、彼女のアバターは緑色の痩せた蛙のような姿である。りほは正体を隠して日常の不平不満愚痴をネットに掲載し、その語り口が好評で多くのフォロアーを獲得している。その人気に注目して雑誌コラムへの連載を依頼するのが、青子の後輩社員・山内(須藤蓮)であった。
須藤蓮は、昨年公開された映画「よこがお」で危険な男を演じていたが、本作では空気の読めないところもあるが純情な青年の役であった。山内に惚れられるりほは漫画や文章力で豊かな才能があるが、自分は何の取り柄もない人間であると思い込んでいる。劣等感を笑いにくるんで、早口のハスキーボイスで呟き続ける伊藤沙莉の演技はさすがである。

りほの元にも巨大な生理ちゃんがやって来るが「私のところに来ても意味ないのに」と毒付き、生理ちゃんが「一生そういう身体になりますよ」と応じるところはシリアスである。生理ちゃんは本体の女性と会話したり、いけ好かない上司に物理的打撃を加えたり、山内が童貞であることを見抜いたりと、「ジョジョの奇妙な冒険」のスタンドのような活躍を見せる。
青子には久保(岡田義徳)という年上の恋人がいるが、亡くなった奥さんとの間にかりん(豊嶋花)という11歳の娘がいる。この子は母親が死んでから2年で父が別の女性と交際することを許せず、青子に敵意をぶつけてくる。青子はかりんと仲良くなろうと手料理を振る舞うが逆効果に。空回りする青子が可哀想で、観ている僕の気持ちまで折れそうになる。

生理の重さには個人差があり、同じ女性同士でも辛さを分かち合うのが難しいと書いたが、青子とかりんの心的距離が縮むきっかけとなったのがかりんの初潮であり、トイレでの先輩女性との会話と対になっている。かりんに必要な物品を渡して感謝された後に、久保に買い物の領収書を差し出すシーンは、結婚相手ではなく友達として付き合おうという意思表示であろう。
「自分に呪いをかけるのをやめなよ」という生理ちゃんのセリフが、本作のテーマであろう。この「呪い」というのは、仕事や結婚生活を完璧にこなさなければいけないという呪縛、それができない自分には価値がないという思い込みである。これは多くの物を背負っている男性にも当てはまることで、女性の生理とはまた別の問題ではないかと思うのだ。

詳細評価

物語
配役
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