どんなハッピーエンドよりも素敵
- bet***** さん
- 2019年8月29日 0時32分
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未亡人の人生は終わったようなものなんです。そう自嘲するメイドのラトナ。いや、君も妹もまだこれからじゃないか。雇い主アシュヴィンは語りかける。
まさにそのとおり。優しい旦那様はニューヨークで過ごした価値観で未亡人の呪縛をばっさりと斬る。
実はラトナもそれはわかっている。自分の惨めな境遇を語ることで結婚式直前に破局して傷ついた旦那様を励まそうとしたのだ。徐々にその優しさは伝わり、アシュヴィンの心は癒やされていく。
日常生活の何気ない一瞬一瞬の積み重ねが優しく描かれる。人に作ってもらうライム水はこんなにもおいしく見えるのか。
浮気した婚約者は、自分に不満だったのだと悟る彼は、結婚について真っ当な考え方を持つ。信頼の置ける愛する相手と一緒になりたい。社会的な身分は重要ではない。
ただ条件の合った女性と深い覚悟もなく一緒になろうとした失敗に気づいたのか。ラトナはアシュヴィンの初恋なのかもしれない。ラトナの最初の結婚も恋をした末のことには見えない。夫は病気を隠していたのだから。ラトナにとってもアシュヴィンは初恋なのかもしれない。
こんなにも2人は若く美しく健康なのに、ボンベイではなくムンバイの高層マンションに住む現代の住人なのに。まるで格差社会という檻に住む囚人のように見える。日本人の私には想像できないほどの難関がありそうだ。
妹から彼は映画スターのよう?と聞かれて、いいえ、真面目な人よと答えるラトナ。鑑賞前の予想では、ひたすら身分違いと身を引く女を励ます御曹司のラブストーリー。でも少し違った。
賢明なラトナは夢を実現して自立することが自由への道と信じて頑張る女だった。泣いたのは一晩だけ。ファッションデザイナーになって成功すれば富裕層と結婚できるとは限らないが、召し使い(ラトナ自身がそう思っている)ではダメ、対等になって恋人の名前を呼ぶことが2人の関係の第一歩と気づいたようだ。
ラストシーンは、これまで感じたことのないほど素晴らしい余韻。ハッピーエンディングよりも素敵なハッピーオープニングを見た。
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