カーストの中で生きること
- jts***** さん
- 2019年8月31日 8時16分
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- 総合評価
予告編と秀逸な邦題に惹かれてシネ・リーブル神戸にて鑑賞しました。この邦題で物語は大体読めてしまうのですが、オフィシャルサイトにあるロヘナ・ゲラ監督のインタビューでも分かる様に、本作の本質はインドに残る因習やカーストを描いているところにあります。
床に座って(食器を使わず)手で直接食べ物を摂る食べ方はインドの当たり前と思っていましたが、本作ではラトナたち使用人の作法として描かれていて、アシュビンたち雇用する側の人々は欧米人と同じくナイフ&フォーク使ってます。そりゃそうかと思いますが少し目からウロコでした。
ラトナを演じたティロタマ・ショームさんは不思議な魅力のある方だと思いました。見た目の年齢が不詳で、ある時は少女の様であり、おばさんの様であり、恋の予感に震える20代の様な顔もあります。
少し不満だったのは細かいエピソードの積み重ねが多過ぎて、ぶつ切り的な印象が残ること。ふたりが惹かれ合う過程が盛り上がっていかない。ラトナがアシュビンにシャツをプレゼントするところ、アシュビンがラトナにミシンを買い与えるところ、ラトナがドレスを汚したアシュビンの友人(この人がすごい美女!)にデザイナーとして雇われるところ、全てが唐突に感じられて観客側の気持ちがついていけない感じがしました。
素晴らしかったのはラストシーンで魅せるラトナの一言。決してハッピーエンドでは無いけれど、ふたりが結ばれる事は無いかもしれないけれど、少なくともアトナの未来は暗くない。そんな万感の想いをのせたシーンでした。
少し思っていた内容とは違っていたけれど、インド映画特有の舞踊シーンもなく、いつもの音楽も少なく、エンドロールがあっという間に終わる、ちょっと変わった、そして意欲的なインド映画の佳作です。ぜひ劇場でご覧ください。
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