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エキストロ
2020年3月13日公開

エキストロ

892020年3月13日公開

Dr.Hawk

3.0

ネタバレ声だけで存在感のある御法度が真の主役だ

2020.3.17 イオンシネマ京都桂川 2019年の日本映画 63歳のエキストラを追った「フェイク」ドキュメンタリー風味のコメディ映画 監督は村橋直樹 脚本は後藤ひろひと 映画は63歳のエキストラ萩野谷幸三にスポットを当ててドキュメンタリー形式で進んでいく そして映画監督の大林宣彦、俳優の山本耕史、ミュージシャンの石井竜也などのインタビュー映像が挿入される 萩野谷は茨城にて歯科技工士を営んでおり、その技術は息子・俊平にも受け継がれている 彼はエキストラを派遣する団体「ラーク」に所属するエキストラで、「ラーク」を取りまとめているのは所長の猪股俊明(役名不詳)だった そしてかつて「ラーク」に所属していた芸人・黒沢あつこへのインタビューなどを交えて、エキストラの仕事風景に切り込んで行くのであった 萩野谷を追っていくうちに、彼が連発するNG、映り込んでしまった謎の物体などを追いかけるハメになる製作陣 そして「幻の鳥」とそれにまつわる伝説、はたまたその伝説をモチーフにしたお蔵入り映画などが噴出して、事態は予測不能な方向に突き進んでいく 私は事前情報ほぼゼロで見始めたので、当初はドキュメンタリーと思っていたが、2発目のお蔵入り原因のモザイク映像の時点で「すべてフェイク」とわかって後半は楽しめた 松崎しげるの奇声を重ね合わせたであろう「お蔵入り原因映像」は爆笑もので、市長(小田川浩)へのインタビューの「松崎しげる御法度の空気感」は絶妙だった その後、NG映像の取り直し費用などを巡る「ラーク」の苦悩とそこに映り込んだ「ある人物」によって物語は急展開となっていく 麻薬密売人・刈谷(芹澤興人)を追うために潜入捜査をする辻川巡査(吉田靖直)と石垣巡査長(高木稟)のドタバタ劇は「あんこうPRのCM撮影」において「あんこう姫こと斉藤由貴の大捕物帳」へと着地するあたりはバカバカしくてコントにしか見えない それを意気揚々とインタビューで語る斉藤由貴の姿と明らかに捏造っぽい新聞の見出しなど小道具もコメディ要素を引き立てていた それらしく見える映像とまったくそぐわない映像の繰り返しによって何を描いているのかわからなくなってくるが、エキストラが映像の信憑性を高める要素になるというのは金言であろう タイトルの『エキストロ』はエキストラとマエストロを合わせた造語である マエストロとは主に芸術家に対する敬称であり、それを映画監督に言わせるところに面白みがあった 彼らはリアリティのための動く小道具であるが、映像のリアリティに対する彼らの没入感は俳優たちの虚構よりも難しい だが演技素人でも虚構を自分の体験に置き換えることでその状況を作り出すことができる 萩野谷のそれは過剰であったが、要はそう言ったモブをどれだけ自然に溶け込ませるかが監督や演出家の腕なんだと感じた いずれにせよ、良い映画を撮りたいというプロの想いとそれに尽力を注ぎたいという素人の思惑を融合させるのはとても難しい 映画の初見は俳優を観てしまうだろうが、繰り返し観たときに意外な名優を見つけるときがある そう言った発見にこだわりを感じさせるのも名作には欠かせない要素であると感じた この映画ではそう言った映画の背景を面白く魅せようとする気概に溢れていてとても楽しかった あと、演技の養成所に言ったことはないのだけれど、後藤ひろひとが演じた劇団長はリアルでした 私なら何の木になるだろう 瞬間的なイメージに意味を与えることができるのならば私にもできるのかもしれません

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