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カツベン! (2019)

監督
周防正行
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3.61 / 評価:1005件

解説

『それでもボクはやってない』などの周防正行監督が、映画が「活動写真」と呼ばれていた時代に独自のしゃべりで観客を沸かせた「活動弁士」を主人公に据えた青春活劇。約100年前を舞台に、活動弁士を目指す青年と彼を取り巻く人々を描く。主演を『ニワトリ★スター』などの成田凌、ヒロインを『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』などの黒島結菜が務める。共演には永瀬正敏、高良健吾、井上真央、竹中直人、小日向文世、竹野内豊らが名を連ねる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

偽の活動弁士として泥棒一味の片棒を担ぐ生活にウンザリしていた染谷俊太郎(成田凌)は一味から逃亡し、とある町の映画館にたどり着く。そこで働くことになった染谷は、今度こそ本当の活動弁士になることができるとワクワクするが、そこは館主夫妻(竹中直人、渡辺えり)をはじめ、スターを気取る弁士の茂木貴之(高良健吾)や酒好き弁士の山岡秋聲(永瀬正敏)などくせ者ばかりだった。

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映画レポート

(C)2019「カツベン!」製作委員会
(C)2019「カツベン!」製作委員会

「カツベン!」“活動弁士”という日本独自の伝統芸の語り手たちへの遥かなるオマージュ

 周防正行監督といえば「Shall we ダンス?」では社交ダンス、「それでもボクはやってない」では痴漢冤罪、「終の信託」では尊厳死と、従来、映画が回避してきたテーマを徹底して掘り下げ、入念なアプローチによって傑出した映画的な作品に昇華させてきた実績を誇る。

 その彼が新作で挑むテーマはカツベン=活動弁士である。明治から大正時代にかけて、無声映画の上映の際、楽士の演奏する音楽とともに独特の語りで内容を説明し、身振り手振りの派手なパフォーマンスで観客を熱狂させた活動弁士は、時には映画スターよりも人気を博した。そんな活動弁士たちにスポットを当て、併せて日本映画の黎明期が放つ青春の残り香を掬い取ろうという手の込んだ企みが、垣間見えるのだ。

 主人公の染谷俊太郎(成田凌)は、幼少時から憧れた活動弁士に憧れるも、ニセ弁士として泥棒一味の片割れとなり果て、悪事にいそしむ日々。これではならんと一念発起、辿り着いた小さな町の活動小屋、青木館に雑用係として潜り込む。折も折、ライバルのタチバナ館が人気弁士の引き抜きを画策していた。

 「カツベン!」は、たんにノスタルジックに日本映画の青春を回顧するのではなく、むしろ、当時の猥雑でいかがわしくもやくざな興行界をカリカチュアライズして描いているのが印象的だ。箪笥の押し引き、床の踏み破りなど、しつこいほどに繰り返されるベタなギャグもサイレント時代の古典的な笑いの意図的な再現に見える。「火車お千」「南方のロマンス」といった架空のサイレント映画を上映しながら、曲者ぞろいの弁士たちが朗々と語り芸を披歴するシーンが、もっとも精彩を放っていうのは言うまでもない。とくに酒浸りとなっている、破滅型の無頼派文士を思わせる山岡秋聲(永瀬正敏)は、明らかに徳川夢声がモデルであろう。前説の廃止という画期的な試みを行った徳川夢声は、トーキー以後も役者、そして元祖マルチタレントとして生き延びたが、「カツベン!」は、来るべきトーキーの脅威には一切触れずに、あくまで日本独自の発達を遂げたこの特異な伝統芸の語り手たちへ遥かなるオマージュを捧げているのだ。(高崎俊夫)

映画.com(外部リンク)

2019年12月12日 更新

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