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上映中

37セカンズ (2019)

37 SECONDS

監督
HIKARI
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4.32 / 評価:348件

【良作】「障碍者」でもエッチできますか

【本作品の良さ(性的な生々しさ)を伝えるため以下のレビューでは性的な表現を多用します。ご了承下さい】

「障碍者」と性の関係を描いた本作品。今期邦画ベストランキングに入る良作です!

脳性まひを抱え、車椅子で生活するユマ。母、恭子の介護を受けながら、幼馴染で漫画家であるサヤカのゴーストライターとして働いている。自分の作品を世に出したいと思いたったユマはとある編集者を訪れる。そこで編集長の藤本が放った「あなたはエッチしたことがあるの?」という一言をきっかけに、ユマは自分の「性」と向き合い、同時に「生」とも向き合うため夜の街に繰り出すのであった。

この作品の素晴らしい所が3点あります。

【①説得力のある役者陣】
本柵の白眉はなんといっても、主人公ユマ役を演じた佳山明さんの演技力につきます。ユマの動きひとつひとつ(服の脱ぎ方、スマホの持ち方、車椅子の乗り方など)が脳性まひ患者の動きそのものでした。すごく説得力のある演技をする女優さんだ。と感心してパンフレットを開いたらなんと佳山さん自身が本当に脳性まひをわずらっている!!この時の衝撃と納得感は凄まじいものでした。
演技初体験にして、ユマの顔全体で笑う仕草やエロビデオを見ているときの「やばいものを見ているっ」という表情など芝居の精度が完璧に近いレベル。新たな天才が現れたと思いました。

周りのキャストの演技力にも目を見張るものがあり、お母さん役の神野三鈴さんの母子共依存関係の中での母親の姿。優しさの裏に秘めた狂気と恐怖と孤独を感じさせる芝居お見事でした!
サヤカ役の萩原みのりさんも抜群でした。特にサイン会に現れたユマに対するいやーな視線の投げつけ方。怒りと蔑視の入り混じったあの表情は本当に良かったです。
このようにキャストの卓越した演技力によって、本作品は作品終了時までリアリティを保っていました。

【②新進気鋭の監督の瑞々しい演出】
監督のHIKARIさんの見事な演出がさらにリアリティに拍車をかけます。冒頭に登場する入浴シーン。ユマの脱衣を見て「この監督は乳首や陰毛が存在する作品(嘘のない作品)を撮ろうとしているんだな」ということが伝わってきました。
同時に母親がユマを後ろから抱くような形で入浴させ、ユマが母親の支配下にあることを暗に示し、観客に「これはユマが母親の呪縛から逃れようとする話だ」と話の大枠をつかませることに成功しています。ここまでたった5分。一切のセリフでの説明を使っていません。これだけでも監督の確かな力量を感じます。(その後のプリクラでユマとさやかの関係性を示す演出もバッチリでした)

エロ漫画やアダルトグッズに対する愛にも感心します。
編集部の電話の保留音から流れるあえぎ声には笑ってしまいましたし、スクリーンに平然とディルドが映る様にはもはや感動すら覚えていました。(AVを見た後にユマがオナニーをしようとする場面も童貞中学生感があって最高でした)

また、場面転換時に強烈なインパクトを残すアスカマツミヤさんの音楽も秀逸でした。音楽だけでユマの感情が分かる。見事な演出でした

このように緻密に計算した上で、テンポよく物語を進めて行ってくれるので飽きることなく物語の世界に熱中することができました。


【③明確なメッセージ性】
「障碍者」と性の関係をコミカルに描きつつも、その根底にある「普通」に生きたいと願う「障害者」の悲痛な姿を描き出すことも成功しています。
例えばユマが舞(風俗嬢)に尋ねた「障害者でもエッチできますか」いう言葉は胸に刺さりました。テレビなどのメディアにおいては「障害者」=「無垢なもの」=「性欲などない」と演出されがちですが、実際は「障碍者」も私たちと同じ様に性欲があり、いつか意中の異性との性行為願望を持っていると赤裸々に伝えます。

また、車椅子の上から見上げた視点での映像を使うことで「健常者」が経験したことのない「障害者」の視点を獲得させ、自分たち「健常者」は「障碍者」について何もしらないことをわからせます。

さらに、保護の名目でユマの人権を平気で蹂躙する母親の姿(私物を漁るシーンなんてまさに「最悪」の二文字でした)やユマの才能を食い物にし、自分の成功の土台にしようとするサヤカの姿から「健常者」だって(あるいは「健常者」の方が)本当はマトモじゃない。という事実を私たちに突きつけてきます。

【総評】
上述したように本作品は最後までそのリアリティを保ちつつ、テンポのよいコミカルな演出の中に「障碍者」に対して私たちがどう考えていくべきなのかのヒントを散りばめる、いわゆる笑って、泣いて、考えさせられる要素(名作3点セット)をふんだんに盛り込んだ珠玉の作品となっています。

HIKARI監督の次回作が楽しみです。

@2/11 ユナイテッドシネマキャナルシティ 12:50~

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 笑える
  • 楽しい
  • 知的
  • 切ない
  • コミカル
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