伝えたいメッセージはラストで明らかになる
- hoshi595 さん
- 2021年1月25日 4時30分
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「日蝕」で芥川賞を受賞した平野啓一郎の同名小説を原作に、「県庁の星」で映画監督デビューを果たした西谷弘が手掛けた作品。一見ラブロマンスのようだが、次第にそれだけではないと感じさせる奥深い人間ドラマに仕上がっている。
主演は、自身マルチタレントというような言葉ではとても言い尽くせないほど多岐にわたり活躍を続けている福山雅治。主人公はクラシックギタリストという設定なので演技の必要がないと思えるほど溶け込んでいるように見える。
相手役は、「北の零年」で日本アカデミー賞優秀助演女優賞受賞の石田ゆり子。こちらもエッセイスト、ナレーターなど幅広く活躍している女優で、映画の舞台として出てくる異国の風景も似合っている。
物語は、偶然の出会いからお互い惹かれ合うようになる恋愛模様を背景に進行して行くが、途中に事件が起こったりサスペンス映画かなと思わせるようなシーンも出てくる。
そもそも40歳前後の二人が出会うのは、20代の情熱的な恋愛とは違い、もどかしさえ感じ、ともすれば優柔不断な姿勢を咎めたくなる。そして、どう見ても異常な行為によって、物語は意外な方向に進んで行くのだが・・・
共演は、古谷一行や風吹ジュンなど、味わい深い俳優が主演を引き立てている。
しかし、紆余曲折の人生を歩み、過去のわだかまりにこだわりながら生きる主人公を見ていると、決して幸せそうには見えない。
実は、本作品を理解するには、ある台詞がキーワードになっている。それは「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」という部分。
実は原作者の平野啓一郎の著書は小説だけではなく『「私とは何か 「個人」から「分人」へ 』という題名で「文人主義」について解説しているものがある。人間関係に悩む人々に一石を投じた作品であり、本作品と無縁ではない。
映画のラストシーンはことさら重要で、それまでの全てのシーンを飲み込んでしまうほどである。この映画も例外ではなく、それまでの理解不能な出来事を忘れさせる名場面で終わりを告げる。
その余韻から感じるものが最大のテーマになっている。
そして「マチネの終わりに」という題名がなぜ付けられたがわかるシーンがよみがえってくると、言いようもない幸福感に包まれてくる。
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