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ボーダー 二つの世界 (2018)

GRANS/BORDER

監督
アリ・アッバシ
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3.56 / 評価:257件

解説

第71回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」でグランプリを受賞したミステリー。驚異的な嗅覚を持つ孤独な女性が、生活が一変する事件に巻き込まれる。監督のアリ・アッバシが、『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作者ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの著作を基にして、リンドクヴィストと共に脚本を手掛けた。出演はエヴァ・メランデル、エーロ・ミロノフら。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

違法なものを持つ人をかぎ分けることができる税関職員のティーナ(エヴァ・メランデル)は、ある日、勤務中に風変わりな旅行者のヴォーレと出会う。彼を見て本能的に何かを感じたティーナは、後日自宅に招いて離れを宿泊先として貸し出す。ティーナはヴォーレのことを徐々に好きになるが、彼はティーナの出生の秘密に関わっていた。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)Meta_Spark&Karnfilm_AB_2018
(C)Meta_Spark&Karnfilm_AB_2018

「ボーダー 二つの世界」観る者の想像をはるかに超え、あらゆる“境界線”を破壊する衝撃作

 映画とは、観客を驚きに満ちた未知なる世界への旅に連れ出してくれるエンターテインメントだ。私たちはその日の気分でホラー国やファンタジー国やスリラー国行きのチケットを買い、日常から非日常への“ボーダー(境界線)”を超えていく。しかし何らかの理由で「ボーダー 二つの世界」のチケットを買ってしまった人は、到着間もなく胸のざわめきを覚えるはめになるだろう。ああ、私はどこに来てしまったのか。これは、この世の出来事なのだろうか、と。

 この北欧2ヵ国の合作映画は、「ぼくのエリ 200歳の少女」の原作「モールス」で名高いスウェーデン人作家ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの小説を、イラン系デンマーク人のアリ・アッバシ監督が映画化したもの。スウェーデンの森の一軒家で暮らす主人公の女性ティーレは、人間の羞恥心や怒りなどのネガティブな感情を察知できる嗅覚の持ち主で、税関の検査員としてその人間離れした特殊能力を生かしている。それ以前に観客がギョッとさせられるのは、ティーレのフリーキッシュな風貌だ。現代の文明世界に溶け込んで生活している彼女は、その醜い外見ゆえに周囲から異端視され、森の野生動物との戯れに安らぎを感じている。そんな異形の主人公が同じ風貌や匂いを持つ流れ者の男性ヴォーレとめぐり合い、自身の出生のルーツを探りあてていくという物語だ。

 本作はまぎれもなく一種のホラーなのだが、ヴァンパイアが血に飢えて牙を剥き、狼人間が満月の夜に変身するといったモンスター映画の既視感ある描写を一切排除し、ジャンルの境界線を曖昧にしている。映画内のリアルとファンタジーの境界線も取り払われ、ティーレのアイデンティティーをめぐる謎だらけのドラマと、児童ポルノという現実社会のおぞましい犯罪捜査が並行して展開していく。そして、この映画はいったいどこへ向かっているのかと観る者の動揺が激しさを増す中盤、ついに決定的な衝撃シーンが炸裂し、この何もかもか奇妙な映像世界は性別や種族の境界線をも飛び越え、もはや正常と異常の境目さえ崩壊したクライマックスへとなだれ込んでいく。

 「小さな恋のメロディ」の吸血鬼ヴァージョンとも評された「ぼくのエリ」の甘酸っぱさはここにはない。その代わり、とてつもなく獰猛な野性がみなぎり、一度観たら忘れようのない唯一無二の映画体験をもたらす。ぜひとも、この掛け値なしの問題作を覗き込んでほしい。危険で恐ろしい旅になることは必至だが、行き先が北欧であることは間違いない。なぜなら本作のアイデアは、当地のポピュラーな民間伝承に基づいているのだ。(高橋諭治)

映画.com(外部リンク)

2019年10月3日 更新

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