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上映中

アス (2019)

US

監督
ジョーダン・ピール
  • みたいムービー 227
  • みたログ 406

3.41 / 評価:333件

おもしろくはあるが、疑問と矛盾だらけ

  • lry***** さん
  • 2019年9月11日 23時48分
  • 閲覧数 944
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

ジョーダン・ピール監督は前作『ゲット・アウト』で人種差別問題をホラーの衣でくるみ、独自の世界観を作りあげた。今作も手法は同じで、貧困や格差の問題をスプラッター的なホラーの意匠で包んでいる。おもしろいことはおもしろいのだが、何かこう、すとんと落ちないのである。見終わったあとにくっきりとした感動が残らない。理由を考えてみた。

この世でもっともおそろしいものは自分自身だというのは、言い尽くされたことである。まあ、一応、それがこの映画のテーマのひとつだとしよう。

今さら断るまでもないが、ドッペルゲンガーとクローンは明確に異なる。前者は自己視(別の自分を見ること)であって、幻覚的心理的なものである。それに対し後者は遺伝子操作によって生み出された、現実的フィジカル的なものである。映画に登場する影の一家は刺されたり殴られたりすれば血を流すし、死ぬこともあるのだから、フィジカル(肉体)を持った、れっきとしたクローン(人間=アメリカ人)である。

地下で暮らしている人々は現実のアメリカの貧困層のメタファーであり、彼等は地上の人間たちに対して反乱を起こす。彼等ひとりひとりが、地上の人間のクローンであるーーここまではわかる。

では、アメリカには三億三千万人弱が住んでいるが、地下にそのクローンが三億三千万人弱住んでいるということなのだろうか? 彼等はどのように暮らしていたのか? 食料や日用品、電気、ガス、水道はどのように、誰が調達していたのか? その予算はどこが出していたのか?

精神まではオリジナルをコピーできなかったという設定のようだが、飯は食わなきゃならない。うさぎだけを食べていた? 病気になるし、ちゃんと成長できないぞ(クローンと言えど、普通の人間なのだ)。さらに、ヒロインのクローン(五、六歳)があんなに簡単に地上に出られたのに、なぜ他の連中は地上に出ないのか?

もっと深い疑問。

本物とクローンの行動はどうやら連動するらしい。本物が行為して妊娠すると、クローンも行為して妊娠する。

さて、本物AにはクローンAがいる。本物BにはクローンBがいる。しかし、クローンAとBの間に生まれた子供は、本物AとBの間に生まれた子供のクローンではないのではないか? いくらクローン同士とはいえ、自然生殖でまったく同じ子供が生まれるとはちょっと思えないのだ。

いや、アメリカの複製人間の技術は、クローンの子供もクローンになるよう進歩していたのだと、反論するだろうか? もはや、何でもありということか?

なら、白人家族はどうだ? はさみを持った二人の娘が、本物娘のクローンだったとしよう。しかし、両者ともに女の双子であり、見た目もそっくりである。たぶん年齢(や生年月日)も同じなのだろう。いくらなんでも、ここまで一致するだろうか? 生まれる子供も必ずクローンになるにしても、その生まれ方(双子になるかどうか、何年何月に生まれるか)まで一致するよう、科学技術で制御できるだろうか? それができるのは、神だけだ。

どうも監督は、地下の人々をクローン(現実的物理的存在)であるともドッペルゲンガー(幻想的神話的存在)であるとも解釈しているようである。両者の境界を曖昧にしてしまえば、あとはどのようにでもできるのだ。疑惑や矛盾も、曖昧さによって逃げられる。

巧みな演出と言えるが、同時に狡猾な演出でもある。私はあまり称賛できない。

ラストでヒロインのクローンが、長々と種明かしをする。種明かし自体は多少は必要だろうが、どこまで必要だったか? テザートうんぬんは、いらなかったようにも思われる。なぜなら、理屈をこねてしまうと、その理屈に対して一気に(上記のような)疑問や矛盾が噴出するからだ。といって、説明不足だと「よくわからない」「意味不明」と批判されてしまうし……。難しいところである。

一家同士の血まみれ対決はなかなか見応えがあったので、星三つとした。

詳細評価

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配役
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音楽

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  • 不思議
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  • 恐怖
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