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三人の夫
2019年7月12日公開

三人の夫

三夫/THREE HUSBANDS

R15+1012019年7月12日公開

まっとさん

4.0

裏テーマを考えさせられました

ムイ役の主演クロエ・ヤーマンの怪演ぶりが出色でした。3人の夫を持ちながら売春で生計を立てる魅力的な白痴の女。彼女の性欲と夫たちの心情をコミカルに描いています。それはそれで単純に面白いのです…  がしかし、それだけではありませんでした。  これは「香港」そのものの存在を描いているではありませんか。「海」「陸」そして「空」を章立てにしていて、それは例えば貿易港としての海の香港。金融業としての陸の香港。そして世界第3位の乗降客を誇る新空港=「空」の香港。  エンディングに流れるラジオのコメントによって、3つの顔を持つ香港が中国政府によって蹂躙されていく予感を感じさせます。大きな声では言えないのですが、今作の裏テーマがここで明らかにされるのです。  かつては一国二制度といわれた香港。それがいま形骸化しようとしていますね。香港では7月に入ってから立法会(香港議会=香港政府)に対するデモが行われています。今回の市民デモは本気ですね。    1997年に香港はイギリスから中国に返還されましたが、特別行政区として返還から50年は独自の法制度を持ち、表現の自由などの権利も保障されているはずでした。中国国内では絶対許可されない、1989年の天安門事件の市民追悼も香港ではできるのです。  しかし、最近ではその香港自治が脅かされていますね。今回のデモの発端となったのは、犯罪容疑者を中国本土に引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案でした。  これまで中国本土から政治的理由で迫害されて香港に逃げ込む人々が多くいました。もちろん貧困から逃れてきた人々も多いでしょう。  逃亡犯条例の改正案が通ってしまえば、これまで香港に逃れた政治犯は再び大陸に連れ戻されることになります。それだけでなく、中国政府による香港の直接統治が強まり、自由も民主主義もなくなっていくことになります。  香港は確かに魅力的な女性に例えられるでしょう。一国二制度のなかで中国政府に利用されるならまだしも、法制度も民主主義も無視され蹂躙されてゆく…もしそうなったらタイトルは「四人の夫」になります。  香港が

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