レビュー一覧に戻る
映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!
2019年12月13日公開

映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!

SHAUN THE SHEEP MOVIE: FARMAGEDDON

862019年12月13日公開

mat********

4.0

セリフが台無しにすることへの反面教師

本当に自分でもどうしたことか、と思うくらい、セリフに因らない演出をキレイに決めている作品ばかりに遭遇している。「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」では、キャラクターは呟けるものの、声にはなっていない。「ヒックとドラゴン 聖地への冒険」での、トゥースとホワイトフューリーとの邂逅の場面でも二人は言葉を発しない。 そして、令和2年の初映画鑑賞に本作を選んだのだが、はっきり言って「時間帯があったから」だけしか動機がない。ひつじのショーン自体は知っているし、ハズレでも仕方ないかな、くらいの軽い気持ちでスクリーンに対峙する。 だが、これもまた、無声映画ばりの、会話も、感情の吐露も、つぶやきも、心の声も、何もかもないのに、すんなり腑に落ち、次が気になり、しっかりと画面で緩急をつけていることでその波にのれるということだけに身をゆだねていけるところが面白いし、楽しい。 なんといっても、この作品のクライマックスは、(主鑑賞層である、小学校低学年あたりを想定していると思うのだが)ロボ化した悪役の車がショーンと宇宙人の子供を追い詰めていくところである。ドラマだし、ここでやられては身も蓋もないところなのだが、ショーンの仲間たちが止めにかかるところなどはしっかりと脚本も練られている。それが終わってからの最後の試練は、ご両親登場で大団円、となって、ほっとさせてくれる。 それだけでも十分なのに、実は、悪役は、その夫妻の若かりし頃に出会っていた、とわかるところは、うならされる演出だった。宇宙人に遭ったことをバカにされて苦節十数年。「見つけてやる」ことだけを執念に活動してきた彼女が報われるその時、我々も彼女の心の傷が癒えていくことを追認できるのだ。様々な作品のオマージュがちりばめられ、ドタバタに見せているようで、異形のものとのつながりや友情までが描かれているのだ。 たださえ手間暇のかかるストップモーションアニメ。話の内容がつかみにくく感じる序盤は仕方ないかもだが、言葉に頼らない彼らの一挙手一投足は、時に笑いを、時に感動を与えてくれる。俳優にしゃべらせて分かってもらうように考える凡百の映画たちは、彼らの語らずしてわからしめる技巧の万分の一でも取り入れるべきではないか、と思ったりする。

閲覧数503