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上映中

アルプススタンドのはしの方 (2020)

監督
城定秀夫
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4.24 / 評価:237件

しょうがないはしょうもない。

どこがアルプススタンドやねん!とツッコンだら負け。序盤に感じる甲子園じゃない感は早晩どうでもよくなります。
(パンフ読んだところ、甲子園での撮影許可申請に関するエピソードが書かれてて面白いです)

さて、アルプススタンド好きには外せないこの作品。ちょっとナメてたわけではないのだけど、8回と最終回の攻防に手に汗握り、気がついたら泣いていた…
わずか75分の中に青春や人生のあれこれを詰め込んで、野球シーンは一切ないのに、試合の展開と共に登場人物の思いや関係性が変わっていく鬼脚本。
あと、真の主人公は代打で送りバントした矢野君。顔も姿も映らず、声も聞こえないのに。凄い!本作観た人全員矢野君ファンだよな!

なんの説明もなく始まるこの作品。
ほどなく、あすはとひかるの会話から、強制で甲子園の一回戦に連れてこられた県立東入間高校生だと分かる。強豪との対戦にほぼ全校生徒が大声援を送るなかで、アルプススタンドのはしの方に座って「ファウルボールに当たって死にたくない」とか言ってる、野球のルールとかほとんど知らない2人。
たまに実況中継的に試合展開を語りながら滲ませる、何かを諦めた過去や、諦めざるを得なかった理由。2人は共に行動はしてるものの、どこか遠慮しあっていて、でも他の誰かと交わることもなく、はしの方にずっと座って、文化部なんて誰も応援してくれないのにと愚痴をこぼす。これは、ほとんどリアル「すみっこぐらし」だ。

そこに、何かを諦めた男子生徒がやってくる。さらに、大枠でははしの方でありながらも少し離れた場所に眼鏡っ子がやってくる。

キラメキとか燃焼とかと程遠いこの4人みんな、青春の無駄づかいだ。生きづらさや息苦しさも抱えている。そうだ、これは、日本版「フレンチアルプスで起きたこと」だ(言いたかっただけだ)。

しょうがないと諦めること。
そんなことは人生山ほどある。
奇しくも、春夏の甲子園が中止になってしまった今年。しょうがないと言い聞かせて諦めた球児はどれほどいたことだろうか…
でも、しょうがないに慣れてしまうと、しょうがなくないことまでしょうがないと片付けてしまう。それは実にしょうもない。そんなことの再現性は高めなくていいんだ。
しょうがないを捨てていく4人の心の変わりよう、4人の関係性の変わっていくさまに何度も膝を打った。

「人生は空振り三振の連続だ。でもいちばんいけないのは、怖がってバットを振らないことだ」という、コメディリリーフ的存在の先生が放つこのセリフは、後々で意味を持ってくる。バットを振らせない大人も多かろう昨今、ありがちな名台詞に終わらせないのも上手かった。

青春の無駄づかいカルテットと対比するかのように、勉強、部活、恋愛すべて順調でまるで進研ゼミのような吹奏楽部部長が、キラキラした存在として描かれているが、実は誰よりも努力してる人間だったという味付けも絶妙だったし、細かいとこだけど、泣く人を誰にするか?についてもよく考えられた脚本だった。

「映画に主題歌はいらない」のジェリー・ゴールドスミス派だけど、the peggiesの主題歌「青すぎる空」、めちゃくちゃいいぞ!「青ブタ」の「君のせい」のバンドじゃねえか、迂闊だった!

原作は、一公立高校教諭が書いた戯曲だと知った。凄い。

詳細評価

物語
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