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アイリッシュマン (2019)

THE IRISHMAN

監督
マーティン・スコセッシ
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3.70 / 評価:575件

コロナ禍に通じる70年代米国の閉塞感の正体

  • ROCKinNET.com さん
  • 2020年6月13日 10時48分
  • 閲覧数 434
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    • 総合評価
    • ★★★★★

デ・ニーロ演じるアイルランド系のトラック運転手がマフィアの世界で成り上がっていく様が描かれる。彼の人生と平行して、ケネディ暗殺などアメリカの重大トピックスと、その時の70年代のアメリカ内の不穏な空気感を絶妙に捉えながら彼の半生をじっくり描いた重厚な映画だった。

●移民を描き続けてきたスコセッシの集大成!

『グッドフェローズ』『レイジング・ブル』『ギャング・オブ・ニューヨーク』のように“成り上がり”物語を描き続ける御年77歳のスコセッシの反骨精神には脱帽しかない。彼らの姿は、シチリア系イタリア移民の家に生まれアメリカ国内の映画界でのし上がったスコセッシ自身の投影でもあるのだ。この『アイリッシュマン』も移民がアメリカ内部で成功を勝ち取っていく物語。それを、旧友であり盟友でもあるデ・ニーロ、パチーノ、ペシによって演じられる、『アイリッシュマン』は、ある種のスコセッシの集大成な気がした。

●スコセッシのMCU批判もコレを見れば納得する!

スコセッシがMCU批判をしたのも、結局は「興行的な成功が確実視されるフランチャイズ映画にしか予算を出さない映画業界」への警告と憂いであり、「映画は人生を描くこと」「オリジナルの才能が枯渇してしまう」という発言からも分かる通り、映画自体の批判という稚拙なものではなかったことは、この『アイリッシュマン』が何よりもの証明であろう。

●ディランの新曲と通じる70年代の不穏な空気感の正体とは?

ディランが新曲「Murder Most Foul」を発表し話題となった。ケネディ大統領暗殺時の70年代のアメリカに漂う空気感を穏やかに訥々と物語を紡ぐように繰り広げた17分にも及ぶ一大叙事詩。その歌詞を読んでいて感じる、ケネディ暗殺の陰謀説。FBI、CIA、副大統領、政治組織、マフィア、労働組合(パチーノ演じる組合長の首長はケネディと激しく対立していた)など様々な組織が関与してると憶測されているが、この全ての思惑が複雑に絡み合い、ひとつの総体となって「悪意」へと集積された末の事件なんだと、それが不穏な空気感の正体で、それを映像化したのが『アイリッシュマン』に他ならないと感じた。

●『アイリッシュマン』の空気感はコロナ禍に通じる閉塞感

ただ、この空気感は悪戯なことに、公開された2019年ならトランプ政権下のナショナリズムが横行する差別意識などと結び付けてアレコレ論評しただろうが、2020年に新型コロナウイルス感染拡大が世界規模になり、それどころの騒ぎで無くなり、世界大戦に並ぶ有史以来の未曾有の危機に陥ってる現在の絶望や不安などの閉塞感と奇しくも似通っているものを感じる。ディランもスコセッシも、世の微妙なズレを

●デ・ニーロとパチーノの相対する演技合戦が見物

意外にも今回がスコセッシ作品初出演となるパチーノが労働組合の長として時には攻撃的に動的に活動するに対し、デ・ニーロは対称的に静的に状況判断をし、マフィア界の重鎮ペシとの間を取り持つクッション役を買っている。『ヒート』で目にした以来の両者の共演にも感動を覚えるが、ハリウッドを代表する大物俳優同士の動と静の相対する演技の絶妙なコントラストを見るのは実に贅沢な時間だったと身震いする思いだった。

詳細評価

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