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ラストレター (2019)

監督
岩井俊二
  • みたいムービー 901
  • みたログ 2,341

4.00 / 評価:1,977件

甦る初恋の記憶

  • 出木杉のびた さん
  • 2020年1月15日 10時44分
  • 閲覧数 5203
  • 役立ち度 77
    • 総合評価
    • ★★★★★

岩井俊二監督の最高傑作は『Love Letter』だと思っていたが、それに匹敵する傑作だった。しかもまた手紙が重要な役割を果たしていて、これは対となる作品だ。もう手紙など書く人も少ないと思うが、アナログ感、届くまでの時間、封を開ける時のときめき、直筆の文字など、メールでは味わえない趣は捨てがたい。今の時代に手紙を書かなくてはならなくなった理由も、この物語の発端とうまく絡めて、岩井作品独特のワールドに導かれる。そしていつしかその世界に浸り、現実を忘れて物語に没入することになる。

そんな世界観を紡ぎだすための、キャスティングが絶妙。『四月物語』の初々しさが忘れられない松たか子。彼女の持ついたずらっぽさが、遠野裕里役にぴったりで、やってしまったことも含めて物語の牽引力となっている。また、裕里の娘・颯香と高校生時代の裕里を演じた森七菜が本当に可愛らしい。そして何よりも広瀬すずの魅力が絶大。現在の遠野鮎美と、高校生時代の遠野未咲を演じ分けている。美しいがどこか儚げな印象を醸し出し、泣かせ要素がふんだんだ。一発屋の書けなくなった小説家、乙坂鏡史郎を演じる福山雅治も渋い味を出す。普段の格好良さとは裏腹の、未練がましい男のみじめさを演じてお見事。打ち負かされた感の控えめな芝居も良い。中山美穂、豊川悦司のコンビ復活が、懐かしくも嬉しい。『Love Letter』ではすっかり泣かされたが、本作では禍々しい部分を受け持つことになる。二人の出番は少ないが、増した円熟味で物語に重みと深みを加えている。小室等、水越けいこ、鈴木慶一といった、役者としては素人のミュージシャンの起用が新鮮だ。庵野秀明も同じく。

物語に没入しているうちに、自分の高校時代の忘れていたはずの恋する気持ちが、ジワジワと湧き上がってきた。とても切ない。広瀬すずの美しい顔が、当時自分の恋していた彼女の姿といつとか入れ替わり、まるで広瀬すずに恋していたかのような錯覚に囚われてしまっていた。涙が溢れ出す。もう二度と戻らない青春時代。あの時、恥も外聞も捨てて、もう一歩踏み出していたら、何か変わっていただろうか。思い出は美化されてしまうというが、それでいいじゃないか。もう一つの人生は実現不可能なだけに、一層愛おしい。

鮎美に託された“ストレター”。正直僕の思っていたのとは違うものであったが、未咲の気持ちは十分に伝わってくる。紡ぎあげられた文章は、芽生え始めた愛の結晶。鮎美の未来に託された、未咲が歩みたかった幸福な人生。明るく生きていって欲しいと、痛切に願う。そしてまた、鏡史郎の再スタートとなるはずの、次回作の内容にも期待したい。

詳細評価

物語
配役
演出
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