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ファイティング・ファミリー
2019年11月29日公開

ファイティング・ファミリー

FIGHTING WITH MY FAMILY

1082019年11月29日公開

Dr.Hawk

3.0

ネタバレ理想と現実の差異は、役割と可能性が埋める

2019.12.4 字幕 MOVIX京都 2019年のアメリカ&イギリス合作の映画 実在の女子プロレスラー「ペイジことサラヤ・ジェイド・べヴィス」の伝記を基にした物語 原作はマックス・フィッシャー監督製作のドキュメンタリー『The Wrestles:Fighting with My Family』(エンドロールで映像が少しだけ流れる) 監督&脚本はスティーヴン・マーチャント 物語は2005年頃のイギリス北部ノーウィッチにてWAWの主催するナイト一家の次男ザック(ジャック・ロウデン、幼少期:トーマス・ウィリー)とその妹サラヤ(フローレンス・ピュー、スタント:テッサ・ブランディード、幼少期:トリ・エレン・ロス)がTV番組を取り合っているところから紡がれる WWEの試合にて「ザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)」に興奮するザックと、テレビドラマ「チャームド」を観たいサラヤ 兄妹喧嘩が始まったところに、父パトリック(リングネーム:ローディ・ロッキー・ナイト、演:ニッキー・フロスト)と母ジュリア(リングネーム:スイート・サラヤ、演:レナ・ヘディ)が入ってくる 喧嘩を止めることもなくサラヤにプロレス技を教える父 それから18年後、サラヤはリングネーム:ブリトニー・ナイトとして、ザックと一緒にリングに立っていた 物語はトライアウトに参加したサラヤとザックのうち、サラヤだけが合格するところから動き出す ザックの落選に納得のいかないサラヤは抗議するもののモーガンは受け付けない 勢い余って兄が行かないならと言い出すものの、ザックの「家族の夢でもある」という言葉にサラヤは現状を受け止めるしかなかった かくして18歳にて単身で渡米することになったのである 物語の主題は「役割」である 根底に流れる「才能」の有無 同じ夢を追いながら叶わなかったザックと選ばれたサラヤとの違いは何か? それこそが「特別な何か」であり、「リングで人を惹きつける魅力」である プロレスはひとりではできない スターも脇役がいないと存在感を示せない サラヤが選ばれた理由は「異国からの刺客としてのヴィラン」であり、映画上でモーガンが彼女を選出したのには理由がある (実際はNXT王者だったサラヤに対して、当時のディーヴァズ王者エイプリル・ジャネットことリングネーム:AJ・リー(セア・トリニダート)による嫌がらせの急なタイトルマッチだった) 劇中では「イギリス訛り」を揶揄われ、ビジュアルは「ヴァンパイア」、挙句の果てにホグワーツ(ハリーポッターの魔法学校)へ帰れと罵られる そしてAJ・リーをはじめとした女子レスラーはモデル的な要素を必要とされ、同期のジュリー・リン(キム・マトゥーラ)、キルステン(アクィーク・ゾール)、マディソン(エリー・ゴンザルヴェス)らは元モデルなどのように容姿端麗であった 要はエロ要素のキャットファイト的な見世物としての扱いであり、サラヤが思うような「ガチレスリングの高尚な場」ではなかったのである (実際はショー的要素とガチ要素がミックスされたものだと思われる) サラヤがWWEに望まれたタレント性とザックが求められたものは違い、そして「夢との調和」を克服できるのはサラヤだけだった ザックは悪役をできるほどの凶暴性もないし、スターとして輝けるほどの素質はなかった そう言ったプロレスラーはどちらかの引き立て役をする以外に選択肢はない だがサラヤは求められる悪役性があり、現状を変えたい(ショー要素の配分量)という陣営の思惑もあって、その素養があると考えられたのであろう シナリオのありきの世界でサラヤというキャラクターが壊したもの それこそが女子プロレスリングの分岐点だったと言えるのかも知れない いずれにせよ、兄妹の確執と挫折というわかりやすいスポ根ものとしての面白さと、プロレスにおける偏見と皮肉、そしてイギリスとアメリカの国民性の揶揄など楽しめる要素は満載だった だが、NXTからWWE・ROW挑戦への唐突感やザックの苦悩に時間を割きすぎていて「サラヤとザックの差」を明確に提示できたとは言い難い むしろAJ・リーとの絡みを増やして、サラヤが奮起して倒すというところにカタルシスを持っていくべきではなかったかと思う 映画上では元モデルたちと身体能力に差がなく、それでもタレント性が高くて能力が高いという説得力はなく、シンデレラストーリーとしても挫折のポイントが不明瞭である AJ・リーからの侮蔑、観客からのブーイング、家族との不和、兄との確執などが一気に噴出するという落差が微妙で、家族との不和解消からの周囲との断絶というドラマ性があり、そして家族のサポートで勝利するというような「改変」はあってもよかったのではと感じた

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