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小さい魔女とワルプルギスの夜 (2018)

DIE KLEINE HEXE/THE LITTLE WITCH

監督
ミヒャエル・シェーラー
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3.41 / 評価:39件

”ワルプルギスの夜、万歳!”

今回取り上げるのは、2019年11月に公開されたドイツ・スイス合作映画『小さい魔女とワルプルギスの夜』。僕は小さい頃に「小さい魔女」の原作を図書館で借りて読んだことがある。細かい物語は忘れたが、主人公が先輩魔女たちの魔力をすべて無効化して唯一無二の魔女となり「ワルプルギスの夜、万歳!」と歓呼して歌い踊るラストシーンを覚えている。
「ワルプルギスの夜」という言葉もここで覚えた。子供心に、ただ一人の魔女となった主人公は寂しくないのかなと思った。原作はオトフリート・プロイスラーで、「小さい魔女」の他には「大どろぼうホッツェンプロッツ」シリーズを読んだことがある。「ホッツェンプロッツ」も魔法の要素があり、誤った魔法をかけられてワニの姿に変身したダックスフントを覚えている。

「ワルプルギスの夜」という、魔女が集まるお祭りが開かれるのはブロッケン山で、霧に人間の影が映って怪物のように見える「ブロッケン現象」で有名だ。日本では青森県の恐山か、天狗が住む伝説がある高尾山のような存在か?主人公の魔女(カロリーネ・ヘアフルト)は128歳で、魔女のお祭りに参加したいのだが、年齢が若いという理由で拒絶され続けている。
好奇心を抑えられずにこっそりお祭り会場に潜入するが、すぐにルンプンペルおばさん(ズザンネ・フォン・ボルソディ)に見つかって魔女たちの吊し上げを受け、箒を燃やされ追放される。「これを全部覚えたら招待してやる」と巨大な魔術の本を渡され、空を飛べないのでヨロヨロと本を抱えて歩いてやっと自宅に帰り付き、友達のカラス・アブラクサスに迎えられる。

日本語吹替え版は小さい魔女の声を坂本真綾が、アブラクサスの声を山寺宏一が当てている。小さい魔女は先輩魔女からは疎まれ、さりとて人間社会では生きられない。アブラクサスはカラスなのに飛ぶことができない。このペアは自宅以外に居場所のない、はぐれ者の組み合わせなのだが、そんな屈託をさほど前面には出さず、人生を楽しんでいる様子が伝わってくる。
森の中の一軒家に住む小さい魔女はピノキオのように鼻が高く、小柄だが少女なのか老婆なのか分からない容姿をしている。映画で感心したのは魔女たちの容貌がとてもおっかないこと、魔女が住む部屋の雰囲気が良いことが挙げられる。小さい魔女の誕生日に、アブラクサスによって部屋中に年齢の数だけ蝋燭が飾られるシーンはとても素敵だ。

僕は最近「水を抱く女」のレビューを書き込み、こちらは水の妖怪ウンディーネの話だった。図らずもドイツの妖怪を描いた映画が続いたことになる。小さい頃に僕は「ドイツ怪奇物語」という本を買って夢中で読み、中世の魔女裁判についての記述があった。罪もない人々が大勢犠牲になり、ナチスのユダヤ人虐殺と同レベルの人類史上の蛮行であったと書かれていた。
本作の時代設定は「ハイジ/アルプスの物語」と同じ19世紀頃と思われ、既に魔女だからという理由で迫害を受ける時代ではない。この時代を感じさせる描写としては、森の中で薪に使う枝を拾っていた村人たちが、代官らしい男から薪拾いを禁止されるシーンがある。また賭博場でボウリングが行われ、愛好家が木製のマイボウルを持っているのも興味深い。

魔女の掟としては、金曜日には魔力を使ってはいけないと言われ、人間に危害を加える者こそが「良い魔女」であると教えられる。ルンプンペルおばさんは小さい魔女の行動を監視し、隙あれば罰を与えようと目論んでいる。小さい魔女はおばさんに逆らうように、森で迷子になった幼い兄妹を自宅に招待し、いじめっ子の父親を改心させて親子の愛情を取り戻させる。
自分の意思で人間に善行を積む一方で魔法の本を読み込み、魔法を習得して無敵の力を身に着けたようだ。自分のために危うい立場になった兄妹の周りに魔法の粉で結界を作り、守ってあげるシーンには思わず感動してしまった。先輩魔女たちの能力をことごとく奪い、蛙に変えてしまう。このクライマックスはほぼ原作通りとはいえ、ちょっとやり過ぎだと感じた。

「小さい魔女」はグリム童話と共にドイツを代表する児童文学だ。欧米各国を代表する児童文学を挙げてみると、アメリカは「オズの魔法使い」、カナダは「赤毛のアン」、イギリスは「不思議の国のアリス」、フランスは「星の王子さま」、スイスは「ハイジ」、スウェーデンは「長くつ下のピッピ」、フィンランドは「ムーミン」、デンマークはアンデルセン童話などが思い浮かぶ。
それぞれに各国のお国ぶりが表れているのが興味深い。その中でもドイツの童話はダークな雰囲気が魅力的だ。先に書いた「ドイツ怪奇物語」の記述で「フランス人の幽霊というのは親しみやすいものだが、ドイツ人の幽霊は時に無邪気な子供の仮面を付ける。しかしその仮面の下に、ゾッとするような恐ろしい悪魔の顔が隠れている」とあったのを思い出す。

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