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映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者 (2020)

監督
京極尚彦
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  • みたログ 843

4.26 / 評価:665件

辛みもあるが爽やか。ソーダ水のような映画

  • sos***** さん
  • 2020年11月7日 6時32分
  • 閲覧数 1034
  • 役立ち度 5
    • 総合評価
    • ★★★★★

原作原案、キービジュアルも例年と異なるタッチで、ドキドキしつつ劇場へ足を運びました。
レビューというより感想になります。

しんのすけが一人主人公として活躍する初期劇しんの雰囲気をまず感じました。
巨大ぶりぶりざえもんやラクガキ強制など物語に大きく関わる部分から、ミラクルカメラのデザイン、「スパイ映画みたい」という台詞などのささやかな箇所まで過去作を感じる要素が散りばめられており、ここはあの作品からか?と考えるのが楽しかったです。

登場人物が過去最多で、尺の都合上ラクガキングダム側の掘り下げが甘くなってしまったのはマイナスポイントですが、敵も味方も魅力的なキャラが多くパンフレットも買いました。外伝などがあればぜひ見たい!
勇者、王国、野原家、防衛隊と、各々で動きながらも最後には一つのラクガキへ収束していく様は、点と点を線で結ぶようで面白かったです。

冒頭のクレジット演出、壮大な劇伴と相まってとてもワクワクしました。画家が“上”へ落ちていく部分がとりわけ好きです。
デパート屋上の雨音など全体を通し音楽も素晴らしく、劇場の音響で体感できて良かったです。
また背景には明るく優しい差し色が多く使われ、やわらかなセル画を思わせる画が今作の作風と合って美しいです。

笑いは全年齢向けのギャグ多め、大人向けジョークはほぼなかった印象。少々寂しいものの、定番ネタから令和の今だからできるネタまであり楽しく観られました。
カーチェイスのドタバタ感、キテレツ集団乗車シーン、マサオくんの「ヘンなものが見えてきちゃった」辺りが特にお気に入りです。
一点、ぶりぶりざえもんに関して、持ち味とはいえギャグの半分ほどが逃亡・裏切りに寄ってしまったのが惜しいところ。ただ身代わりの速さのテンポがめちゃくちゃ面白かったのでトントンです。あとツッコミの勢いも個人的ツボ。

ブリーフとの別れも、世界を救う勇者として別れを選ぶ二人の覚悟に泣けばいいのか、二日目のパンツがゴムをミシミシ言わせて引き延びてる様に笑えばいいのか、まさしく笑い泣き、泣き笑いでした。
ギャグアイテムだったお札がお助け料として青空へ消えていく場面は「それ捨てろ!」という声が聞こえてきそうな、笑いと切なさの混ざる演出でグッときました。

いわゆる絶対悪がいないのも特色です。
最も露悪的に描かれたであろう大人達でさえ、母を助けたかったユウマに対しバツが悪そうに押し黙ったり、胸ぐらを掴まれ苛立ちつつも「早く逃げな」と添えたり、決して良心がないわけではないことが伺えました。街へ戻る大人の中には、荷物を放り投げてまで引き返す人もいます。
ただ、子供らを責める場面はわりと生々しい棘がある上に尺も長めなので、若干マイルドにしても良かったとは思います。風刺の効いた二面性自体は清濁持ち合わせた人間らしくて好きですが。

最後に大人も子供も敵も味方もいっしょくたになって街を彩る様子は、はちゃめちゃなのにすごく楽しそうで自由です。
揺るぎない悪も魅力的だけれど、今作においてはそういった悪役がいないことが良い色付けになっていました。

しんのすけの描かれ方について。
周りの思い通りにいかない奔放なマイペースっぷり、ぶりぶりざえもんとチャンバラごっこをしたりみさえに抱き締められ照れた様子で笑う子供らしさ。
「ユウマくんもお母さん見つかって良かったね」という台詞の、本当にそれ以上も以下も含まない自然な表情、声色。ニセななこが消えたことを伝えないシーン。
ブリーフとの別れまで一切涙を見せず、際の際でようやっと誰ともお別れしたくないと吐露する姿。
野原しんのすけの面白さ・愛らしさ・強さ・優しさを感じられ嬉しかったです。

そしてキーパーソン・ユウマですが、前情報がほとんど伏せられておりここでメインキャラが増えるのかと驚きました。
勇者の使命もなく、かすかべ市民ですらない彼が、かすかべの人々へ協力を呼び掛ける声に胸が詰まりました。声優さんすごい。
否定文脈で描かれた電子化が彼の参入によって活躍し、最後で肯定的に描かれる面も良いです。

クールな普通の男の子が勇者と出会い救われて、けれど彼自身も勇者にとっての勇者になっていたのだなと分かる爽やかなラスト。
野原家でも防衛隊でもなく、かすかべ外に住む、しんのすけと何の関わりもなかったユウマだからこそ出せた魅力があったと思います。

互いが互いの救いのヒーローであり、ラクガキたちがいなくなっても、その存在が彼らがいたことの証明になる。「ほぼ四人の勇者」に込められた意味の鮮やかさ。
劇しんでトップクラスに好きなサブタイトルになりました。

最後に。
映画に協力してくれたリアル春日部市のお子さんたち、「ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」は私の宝物みたいな映画になりました。円盤で見返すのが今から楽しみです。
素敵なラクガキをありがとう!

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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