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ライフ・イットセルフ 未来に続く物語
2019年11月22日公開

ライフ・イットセルフ 未来に続く物語

LIFE ITSELF

PG121172019年11月22日公開

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4.0

ネタバレ脈々と人生は紡がれていく

今作は、5つのチャプターに別れており、章ごとに語り部や中心となって描かれる人物が違う。 群像劇のように展開していき、ある事故により運命が交錯していく。 二つの家族の、世代に渡って語られる、壮大な叙事詩となっています。 緻密で複雑な構成がお見事で、徐々にラストへと収束していく過程が面白い。 始まりは、現代のニューヨーク。 冒頭の語り部で登場するのが、サミュエル・L・ジャクソンでビックリ! 早々に退散してしまうという、豪華なカメオ出演ぶりが、可笑しかったです。 オスカー・アイザック演じるウィルは、心が荒んで完全に精神崩壊状態。 お酒を飲んでは暴れる彼に、一体何が起きたのか、過去に遡って描かれる。 学生時代から付き合っているウィルとアビーは結ばれ、第一子の誕生を間近に控え、幸福の絶頂にいた。 深く愛し合う二人の姿は、とても微笑ましいのだが。 アビーも幼少期に不幸な出来事が重なり、不遇な環境下にいたことが明かされる。 アビーの過去、これまでの半生を、回想シーンでウィルが語っていく事で判明。 これが、回想だけじゃなく、時に妄想も挟まれるので、現実をしっかり見極めることが必要。 幸せの絶頂にいた二人だったが、バス事故に遭遇してしまい、アビーは他界。 愛する人を突然失った悲しみに打ちひしがれたウィルは、心を病んだあまり、衝撃の選択をしてしまう。 そして、物語は二人の娘ディランの生涯へと移っていく。 両親を失った彼女が、どのように成長してきたのかが展開。 もしも・・・という何パターンかに別れて、徐々に明らかになっていきます。 随所で、ボブ・ディランの音楽が挟まれ、会話にも登場して絡んでくる。 名前をディランと名付けたことからも分かるように、ボブ・ディラン賛歌の物語でもある。 さらに、偶然訪れたマンハッタンで、その顛末に関わった幼い少年ロドリゴのゴンザレス一家に話は移る。 彼はスペインの大地で、両親と父の雇い主であるオリーブ園のオーナー、サチオーネを、ドラマティックな人生へと誘っていく。 ロドリゴの父ハビエルと母イザベルが、どのようにして愛を育み、ロドリゴが生まれて成長してきたか、という過程を丁寧に描く。 仲睦まじく、幸せな家庭を築いていた一家だが、サチオーネの存在が深く関わってくる。 サチオーネを演じたアントニオ・バンデラスが、なんとも慈愛に満ちている。 穏やかで包み込むような佇まいといい、優しさと懐の深さを感じさせてホッコリさせる。 崩壊劇は、ロドリゴがアビーの死亡事故を目撃した事によるトラウマが発端。 初めて訪れる街に興奮していたロドリゴが、事故を誘発したとも考えられるからだった。 ロドリゴの苦悩は、やがて両親の苦悩となり、次第に・・・。 そして、最後には成長したロドリゴと周囲の人々が描かれていく。 異なる国と世代の主要な男女7人は、やがて不思議な縁に導かれて繋がっていく。 登場する人物は、誰もが幸せを求め、愛がある故に葛藤し、苦悩して人生を模索する。 親子愛、家族愛、夫婦愛を、求めながらも満たされない人々ばかり。 人生において、一瞬の過ちだったり、すれ違いや不幸な運命のイタズラなど、皮肉な出来事が巻き起こる。 事故や病気など、愛する人との別れのたび、人生の岐路に立たされる。 次々と過酷な試練に襲われ、翻弄されながらも、愛の力で乗り越えていこうとする。 やがて、数奇な運命に引き裂かれながらも、思わぬ奇跡で繋がっていく。 祖父母から、両親へ、そしてまた子供世代へと、人生は脈々と受け継がれて紡がれていく。 自身の存在である命の誕生と魂の存続を感じながら、時代は移り変わっていく。 運命の出会いを果たしたラストは、縁を感じさせ感動的で心温まる。 彼らの運命が交錯していくストーリーテリングが絶妙で、ドラマティック。 絶望感や無力感に苛まれ、悲劇に押しつぶされそうな時に、前に進む術を教えてくれる作品。 哀しみの先には、必ず喜びを見出す救いと希望があると分かります。 幸せを渇望しながら、もがく姿も共感度が高く、楽しめました。

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