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影裏 (2020)

監督
大友啓史
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2.97 / 評価:333件

影を演出し、相手の視線を制御する狡猾さ

  • dr.hawk さん
  • 2020年2月17日 22時39分
  • 閲覧数 1590
  • 役立ち度 10
    • 総合評価
    • ★★★★★

2020.2.15 MOVIX京都


2020年の日本映画
原作は沼田真佑著作の同名短編小説(2017年、文藝春秋)
盛岡支社に赴任してきた男とそこで知り合った同僚とのもつれた関係を描いたヒューマンドラマ
監督は大友啓史
脚本は澤井香織


物語は仕事が終わり帰ろうとする今野秋一(綾野剛)が同僚の西山(筒井真理子)に無理やり呼び止められるところから始まる

「ちょっといいかな」と車に乗り込む西山

そうして物語は数ヶ月前の赴任当時が描かれていく


本社から盛岡支社に来た秋一

仕事は勤勉だが話し相手もおらず、黙々と業務をこなしていた

ある日、禁煙の仕事場で喫煙している男を見つけて注意する

その男の名は日浅典博(松田龍平)、話せば同い年でタバコと酒、釣りが趣味の男だった


話し相手のいなかった秋一、自身も釣りの経験があり酒もイケる口、

やがてふたりは仲を深めていった


ある日川釣りに出かけたふたり

秋一はそこで虹鱒を釣ってしまう

手際が悪く逃げられたものの、どこから来たのかに興味を持つ秋一に対し「知らない方がいいこともあるんじゃね」と典博は意に介さなかった


物語は「典博が突然会社を辞め、秋一の前から姿を消す」ところから動き出す

気を許せるほど仲が良くなったと思ったのは自分だけだったのか

苛立つ秋一は次第に孤独になれていく中で、何食わぬ顔をして典博が戻ってくる

聞けば新しい職場に移り、今は営業職として岩手県内でトップの成績だと言う


再び釣りを始めたふたりだったが、ある日の何気ない会話からすれ違いが生じてしまう

些細なことでキツく当たる典博に嫌気が差した秋一は、一緒に朝まで過ごす予定を切り上げて帰ると言い出したのである

そんな秋一に対し、典博は「人を見るときは影の部分の一番濃いところを見るんだよ」と意味深な言葉を残すのであった


冒頭から「綾野剛のサービスカット」満載の日常シーンから「あ、これはそっち系?」と思いながら観ていた

友情が深まった先に秋一が起こす行動は腐女子の皆様への配慮だろうか

そしてそれに対して咎めたり疎遠になったりしない典博

もしやそっちもと思わせておきながらの前述の言葉は、ある意味「裏表の無さすぎる秋一」に対する皮肉のようなものだったのかも知れない


冒頭において「非常用物資」と書かれた段ボールとか、勤務地などか「3.11」絡みであることはすぐにわかる

そしてこの映画では「3.11の被災者」と行方不明になった息子を隔てる父・征吾(國村隼)の存在が大きい

そして「あいつはどこででも生きていけますよ」と突き放す兄・聲(安田顕)

彼らと出会って知る「典博の影」の部分

だが実際のところ「それらの家族が抱えている葛藤」すらも光の部分に過ぎない


典博の影とは「友人の趣向に偏見を向けない」という善的解釈とは乖離した「他人への無関心」である

父が語るエピソードにそれらの「傍観者的なまなざし」に関する言葉がある

父ですら何となく見えたような典博の影は本人以外が知り得ないものなのかも知れない


タイトルは「影の裏」である

意味は「光が当たらない場所」である

そしてその「光」とは「視線」を意味する

そして「見方によって影の場所は変わる」のである


秋一を含め、周囲の人間は典博をどう見たのか?

その視線(先入観)が隠したものの正体は計り知れず、関係性を構築した上で徐々に「影裏」の面積は少なくなっていくはずである

だが最終的に見えない場所は存在する

それこそが人間の本質ではないかと感じた


その後、釣りに出掛けた秋一が虹鱒を釣り上げるところが描かれるのだが、この虹鱒は秋一のメタファーだろう

どこから来たのかわからない存在が住みついて生きている様は土着に対する新参が馴染んでいく象徴のように思える

元恋人・副島和哉(中村倫也)との別れ、そして新しいパートナー清人(平埜生成)との出会いの中で秋一は居場所を見つけていく

過去の恋愛や人間関係は屍のようなものだが、そう割り切れないのも人間なのかも知れない


いずれにせよ、人間は見たいように見て、感じたいように感じる性質があり、特に裏切られた人間は顕著にその幅を狭める

だがその起因が本人にある以上、人として超えていけない線を超えると「人として扱われないという未来を呼ぶ」ことは間違いない

また人は「自分をどう見せたいか?」ということに執着を持つ性質もある

典博は「肩書き」を以って人の興味を惹き、自分自身を誤認させるあざとさがあった

秋一も家族もそれに囚われたために「光を当てる場所を見誤った」と言えるだろうか

典博は生きていくために印象操作をしながら相手を懐柔し去っていく人物である

それがラストシークエンスにおける「高額なコースに変更された契約書」であろう

ちょっと深いけど実は浅いという川釣りに適した小川のような物語だったと感じたのは私だけだろうか

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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